【特集:ドライブレコーダーの進化に迫る】

クルマ本体のトラブルを防ぐために欠かせない日常点検。特に自家用車よりも走行距離が長い社用車の場合、適切な保守管理は一層重要になる。しかし、日々の仕事に追われてなかなか手が回らない人も多いはず。そこで今回は、整備のプロに話を伺った。大型バスから乗用車まであらゆる車種の点検・整備を行う神姫商工で、副安全運転管理者を務める藤井康生氏は「日常点検は10分程度で終わりますし、特別な工具も必要ありません」と語る。日常点検ではどんな項目をチェックするのか、この機会におさらいしてみよう。

神姫商工株式会社 総務部教育課 課長 藤井康生氏(国家一級自動車整備士)

意外と知らない日常点検

――社用車に限らず、クルマは車検のときにプロの目で厳しくチェックされていると思います。それとは別に点検を行う必要があるのはなぜでしょうか?

藤井氏:車検は国が定める安全・環境面の基準に適合しているかを確認するもので、次の車検までの安全性を保証するものではありません。ですから、多くの企業が社用車として使用している乗用車も、適切な時期に日常点検や定期点検を行う必要があるんです。

――日常点検と定期点検にはどのような違いがあるのでしょうか?

藤井氏:日常点検は走行距離や運行状態などから判断して、適切な時期に点検を行うように定められています。もう一方の定期点検は、多くの社用車が分類される自家用乗用車の場合、1年ごとに実施する必要があります。

安全性能が年々向上しているとはいえ、クルマは消耗部品の集まりです。走行すれば劣化が進む点は今も昔も変わりません。日常点検や定期点検でクルマの状態をチェックするのはとても大切です。

――日常点検の場合も、定期点検や車検と同じように期間や頻度は法律で決まっているのでしょうか?

藤井氏:「必ず毎日点検」といったような期間や頻度は定められていません。運転する距離や時間など、実際の運転状況に見合った対応を個々の事業者で決めればいいと思います。ただ、長距離ないし長時間運転する場合は、走行前に点検しておくのをおすすめします。

――特に日々の業務と関わる日常点検について伺います。実際にどんな点検をすればいいのでしょうか?

藤井氏:国土交通省が日常点検のチェックシートを公開していて、エンジンルーム、クルマの周り、運転席の3カ所、合計15項目が設けられています。15項目と聞くと少し多く感じるかもしれませんが、実際この内容を一つ一つ確認しても10分程度で終わります。また、特に工具を使わずに目視確認が可能です。

重要なポイントを簡単にチェックできるよう、非常によく工夫されたものだと思いますので、日々の業務の中で日常点検を行う際は、ぜひそちらを活用してください。

※出典:国土交通省『日常点検項目チェックシート』

整備のプロに聞く日常点検のやり方

▼エンジンルームは「液量」のチェックがポイント

――各項目でどんな点検をするべきなのか伺います。まずは、エンジンルームの点検項目について教えてください。

藤井氏:エンジンルーム内の点検ポイントは、ブレーキ液・冷却水・エンジンオイル・バッテリー液・ウィンドウウォッシャー液の5項目です。日常点検では、液量を目視で確認すればOKです。エンジンオイルの場合はゲージを上まで引っ張りあげるひと手間が必要ですが、いずれの場合でも簡単に点検できます。

エンジンオイルのゲージ

例えば、ブレーキ液に関しては、ボンネットを開けると目につくところにリザーブタンクがあります。車検では他の部品も分解をしてブレーキ液のもれがないかなどを細かく確認しますが、日常点検においては液量が最低ラインと最高ラインの間にあれば問題ありません。

ブレーキ液のリザーブタンク

▼タイヤのトラブルは事故につながりやすいので要注意!

――続いて、クルマの周りの点検項目を教えてください。

藤井氏:特に重要なのが、タイヤの空気圧です。空気圧を測定する専用のゲージがない場合でも確認できます。タイヤの前後左右を見比べて、タイヤのたわみ具合をチェックすればOKです。

たわみ具合のチェック

――タイヤの空気圧が下がるとどんな危険があるのでしょうか?