運転免許の取得にあたって、自動車教習所などで実施するのが「運転適性検査」です。その他にも、社用車を運用する企業が、安全運転教育や事故防止のために従業員研修として実施する場合もあります。
運転適性検査は運転傾向を客観的に知るための検査であり、企業の安全運転指導に
当記事では、運転適性検査の基礎知識から、検査でわかる内容、そして事故防止への活用方法までくわしく解説します。

解説にあたり、企業や団体の事故削減・安全運転管理で豊富なサポート実績を持つ、SSD研究所(株式会社エスエスディ)で取締役を務める野村幸一氏と、営業部長の高林一夫氏に話を伺いました。

SSD研究所 取締役の野村幸一氏(左)、営業部長の高林一夫氏(右)

SSD研究所 取締役の野村幸一氏(左)、営業部長の高林一夫氏(右)

1. 運転適性検査の基本知識

●運転適性検査とは?

運転適性検査とは、狭義では、注意力や判断力、性格の傾向を調べるペーパーテストのことを指します。「適性診断」と呼ばれることもあります。この検査を通じて、自分の行動パターンや特性を客観的に知り、安全運転の実施、事故の防止へとつなげることが大きな目的です。
なお、広義では視力検査などの身体機能の検査も含めて「運転適性検査」と呼びます。

●運転適性検査と運動能力検査の違い

区分 調べる内容 主な方法
運転適性検査(狭義) 性格の傾向・注意力・判断力など心理面の特性 ペーパーテスト(質問紙法・作業検査法)や機器式検査
運動能力検査 視力・深視力・聴力・色彩識別能力など身体面の機能 視力計などの機器による測定

運動能力検査のうち視力については、例えば普通免許の取得に必要な基準として「両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上、又は一眼の視力が0.3に満たない方、若しくは一眼が見えない方については、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること。」と定められています。
出典:適性試験の合格基準|警視庁
運転に必要な視力についてはこちらの記事をご確認ください。

●運転適性検査はいつ受ける?

自動車教習所(自動車学校)で運転適性検査を受ける場合、入所初日に受けるのが一般的です。各教習所では、入所式・適性検査・最初の学科教習を一日で行うスケジュールを組んでいるケースが多く、SSD研究所の野村氏も「大抵は入所した日、学科教程の前に受けることになります」と話します。
また、受検のタイミングは教習所の入所時だけではありません。運転免許センター・運転免許試験場のほか、警察が行う停止処分者講習や高齢者講習などの各種講習、そして企業が従業員向けに行う安全運転研修でも、運転適性検査(適性診断)は活用されています。

2. 運転適性検査の種類|K型・OD式・CRTの違いは?

自動車教習所で広く用いられているのは「警察庁方式運転適性検査(K型)」と「OD式安全性テスト」の2種類で、このほかに機器を使う「CRT運転適性検査」や、運送事業者向けのNASVA「運転者適性診断」などがあります。

方式 形式 主な評価観点 所要時間 主な実施場面
警察庁方式K型 質問紙法+作業検査(マークシート式) 動作の正確さ・速さ、精神的活動性、衝動抑止性、情緒安定性 約30〜50分(説明含む) 公安委員会指定教習所
OD式安全性テスト マークシート+作業検査 運動機能/健康度・成熟度/性格特性/運転マナー(全16項目) 約30分 教習所・企業研修
CRT運転適性検査 機器(画面)上での反応検査 反応の速さ・正確さ、注意の配分 など 約17分(7検査・説明除く) 警察の講習・一部教習所や事業者

●警察庁方式運転適性検査(K型)

【検査の内容】
警察庁方式運転適性検査(K型)は、自動車事故と関連性の深い以下の5要素について検査します。

  1. 動作の正確さ
  2. 動作の速さ
  3. 精神的活動性
  4. 衝動抑止性
  5. 情緒安定性

検査は7つで構成されており、検査1〜6は制限時間内に計算や記号の選択などの作業を行うマークシート式、検査7は質問に「はい」「いいえ」の2択で答える心理検査です。検査自体の所要時間は約32分、検査前に行う趣旨説明やその他の時間を含めると約50分程度となります。
【検査でわかる適性】
作業検査からは動作の正確さ・速さといった運転行動の特性が、心理検査からは性格の傾向がわかります。判定項目の評価をもとに性格タイプに分類され、タイプごとの運転傾向と注意点がアドバイスとして示されます。
【結果の見方・特徴】
K型の結果は、教習指導員が受検者の特性に合わせた指導を行うための目安としても使われます。もうひとつの特徴は、検査を実施する側に資格が必要になる点です。2019(平成31)年3月27日付けの警察庁の通達により、検査の実施者は「運転適性検査・指導者養成要領」に基づき養成された適格者とされています。

●OD式安全性テスト

【検査の内容】
OD式安全性テストは、「はい」「いいえ」で答えるマークシート式の質問と、図形・記号を使った作業検査で構成されます。運転者の安全運転に関する適性を、「運動機能」「健康度・成熟度」「性格特性」「運転マナー」の4つの観点・全16項目で分析し、検査項目別に評価します。所要時間は約30分です。
【検査でわかる適性】
「運転適性度」を1〜5の5段階で、「安全運転度」をA〜Eの5段階でそれぞれ判定し、総合評価を行います。この総合評価の結果を踏まえて、大きく4つの運転タイプに分類されます。

OD式安全性テストの4つの運転タイプ

OD式安全性テストの4つの運転タイプ

①安全運転タイプ:「運転適性度」も「安全運転度」も平均以上の能力を持つタイプ。比較的安全に運転できるものの、「絶対に事故を起こさない」わけではない。
②もらい事故傾向タイプ:安全に対する意識が強く、自分から事故を起こす可能性は低い。ただし、技術的なもたつきが原因で、追突などのもらい事故に遭う可能性がある。
③重大事故傾向タイプ:運転操作は比較的器用にこなせるが、安全運転への心構えに問題があるタイプ。自分の運転技術を過信せず、安全第一を心がけることが大切。
④事故違反多発傾向タイプ:安全運転適性が高くないタイプ。運転する際は細心の注意を払い、常に安全を確保しながら運転する必要がある。
【結果の見方】
タイプの分類は「このタイプだから必ず事故を起こす」という予言ではなく、注意すべき傾向を示すものです。結果の活かし方は3章で詳しく解説します。

●CRT運転適性検査

CRT運転適性検査は、科学警察研究所と検査機器メーカーが共同開発した機器式の検査です。画面に表示される信号や図形に対してハンドルやペダルなどを操作し、反応の速さ・正確さ、注意の配分といった行動機能の特性を測定します。7種類の検査で構成され、検査時間は約17分(説明・練習を除く)。警察の停止処分者講習などで広く使われているほか、一部の教習所や事業者向けの講習でも活用されています。

●事業者向けの方式:NASVA「運転者適性診断」

トラック・バス・タクシーなど自動車運送事業者のドライバーを対象とした方式として、自動車事故対策機構(NASVA)が実施する「運転者適性診断」があります。新たに雇い入れた運転者への「初任診断」、65歳以上の運転者への「適齢診断」、事故を起こした運転者への「特定診断」は省令により受診が義務付けられており、診断結果をもとにカウンセラーが指導・助言を行うカウンセリング付きの診断も用意されています。

●企業研修向けの方式:大森式SDテスト

企業が従業員を対象に行う安全運転研修で活用される検査もあります。SSD研究所が大阪大学の大森正昭教授(故人)と共同開発した運転適性テスト(大森式SDテスト)はその一つです。
野村氏:一般的な性格ではなく、運転中に現れる特徴に絞った検査です。事故を起こしやすい方と起こしにくい方それぞれのグループにテストを受けてもらい、そのデータの違いをもとに作られています。

3. 運転適性検査の結果を安全運転にどう活かすか

運転適性検査を行う目的は、運転における自分の特徴を正しく「知る」ことです。正しく「知る」ことは、運転中に自己をコントロールできるようにすることにつながります。
事故傾向タイプと判定されたからといって、必ず事故を起こすわけではありません。運転における性格面のウィークポイントは、安全態度(交通ルール重視、社会的責任・立場、安全重視・危険回避など)によって抑制できることも覚えておきましょう。

検査で示される性格の項目は、一方的に「悪いもの」でもありません。高林氏は「それぞれの項目には二面性があります。強すぎても困りますが、なくても困るものです。例えば自己中心性は、強すぎれば問題ですが、なければ必要な場面で自己主張ができません」と説明します。野村氏も「30分ほどのテストですべてがわかるわけではありません。結果が自分の認識と違うと感じたら、ご家族や周りの人に聞いてみるのもよいでしょう」と、結果を絶対だと思わないことを勧めます。

そのうえで大切なのが、検査で見えた弱点を「具体的な行動目標」に置き換えることです。「気をつけて運転しよう」という抽象的な反省ではなく、「一呼吸おいて道を譲る」のように、運転中のその場で実行できるレベルまで落とし込むことで、検査結果は再現可能な習慣に変わります。
さらに、検査は一度きりで終わらせないことも重要です。受検直後は意識が高まっていても、時間の経過とともに記憶は薄れていきます。結果を見返し、行動目標を振り返ることで、検査の効果を持続できます。
検査で分かった弱点を日々の運転でどう克服するかは安全運転を行うための具体的な対策で解説しています。

4. 運転適性検査の結果が悪いとどうなる?注意点とコツ

結論から言えば、運転適性検査の結果が悪くても、運転免許は取得できます。運転適性検査は合格・不合格を判定する試験ではなく、教習所への入校や免許取得の可否に影響することはありません。
学校の試験のように回答のコツがあったり、優劣を競ったりするものでもありません。そのうえで、検査を有効に活用するための受検のコツは次の3点です。

  1. 検査員の説明をよく聞く:検査の前には10〜15分ほどの説明があります。回答方法は方式によって異なるため、聞き逃しは戸惑いのもとになります。
  2. 時間内に終わらなくても焦らない:制限時間内に全ての問題に回答できない場合もありますが、焦らず落ち着いて回答しましょう。
  3. 最初の直感で正直に答える:「よく見せよう」とすると正確な結果が得られません。「正直に、素直に答える」意識で臨むのが正解です。

野村氏:検査の目的は自分を知り、事故のリスクを下げることです。採用・不採用が決まるものではありません。

なお、保険会社などがWeb上で受けられる簡易的な運転適性チェックを公開しています。あくまで簡易版ですが、免許取得後に自分の運転傾向を振り返るきっかけとして活用するのもよいでしょう。

5. 企業研修として運転適性検査を行う場合のポイント

運転適性検査は、社用車を運用する企業などにより、従業員向けの安全運転研修の一環として活用されるケースがあります。企業研修で行う場合でも、事故防止へとつなげることが大きな目的であることは変わりません。
野村氏によれば、企業が適性検査を導入する動機はさまざまです。「検査結果を見て、上長とご本人が話をするための道具、つまりOJTのツールとして使いたいという企業も多いです」。
それでは、検査の結果をどうやって日々の安全運転管理や事故防止へと役立てられるのでしょうか。SSD研究所の両氏に、2つのポイントを聞きました。

●ポイント1:結果の分析・解説までタイムリーに行う

従業員向けの安全運転研修として実施する場合、座学講習の中に組み込むのが一つの方法です。このとき重要なのが、結果をタイムリーに返すことです。
野村氏は「適性テストは、時間が経てば経つほど効果が薄れていくと言われています。2時間の座学なら、最初にテストを受けていただき、すぐに処理して、その場で結果をお配りして解説する。ここまでワンセットで行うのが一番いいですね」と話します。記憶が鮮明なうちに結果と向き合うことで、自分ごととして受け止めやすくなります。

●ポイント2:目標設定とドライブレコーダーでの確認

例えば、ある人の検査結果で「自己中心性が強い」傾向があり、運転においても他の車両などに進路を譲る行動が苦手だとわかったとします。野村氏は「そういった方には『1日に3回、譲りましょう』というように、具体的な行動目標を設定してあげるのが一つの方法です。それが実行できているかを、ドライブレコーダーで確認するのも効果的でしょう」と語ります。
継続の仕組みも欠かせません。「研修や適性検査を受けた直後は、安全への意識がピークになっています。ただ、そこからすぐに下がっていきます。行動目標を続けているかどうかの指導にこそ、ドライブレコーダーは本当に活用できると思います」(野村氏)。
高林氏は「3年に1回ずつ定期的に研修を受けていただいている企業は、適性テストも継続して実施されます。従業員を3つのグループに分けて、毎年順番に受けていただく形です」と、継続実施の例を挙げます。
こうした取り組みを整理すると、企業での活用は次のステップで回すことができます。

  1. 適性検査で従業員一人ひとりの運転傾向を把握する
  2. 結果をその場で(タイムリーに)分析・解説する
  3. 弱点を具体的な行動目標に落とし込む
  4. ドライブレコーダーで行動目標の実行を確認する
  5. 定期的に振り返り、必要に応じて再受検する

なお、安全運転管理者の基本業務の中には、「自動車の運転に関する運転者の適性」を把握するための措置を講ずること、との内容が盛り込まれています。運転適性検査などを活用して、診断結果をより適切な運転指導へとつなげることは、安全運転管理者が行うべき業務の一つだと言えるでしょう。
※出典:道路交通法施行規則第九条の十|e-GOV法令検索
安全運転管理者が受講すべき法定講習の費用・時間・内容は〈安全運転管理者等法定講習の概要〉で詳しく解説しています。

まとめ:運転者の適性を知ることは、安全運転の第一歩

個人にとって、検査結果は運転中の自分をコントロールするための材料です。企業にとっては、従業員の適性を把握し、継続的にモニタリングする仕組みこそが事故防止の要となります。
検査で立てた行動目標が日々の運転で実行できているか。それを確認する手段となるのが、通信型ドライブレコーダーです。「適性の把握→行動目標の設定→ドライブレコーダーでの実行確認」の流れを、安全運転管理に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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