Project Story

車載インフォテインメントの
最前線で挑む、
若きエンジニアたち。
現代のクルマは「走るソフトウェア」へと変貌を遂げた。その中核を担うのが、エンターテインメントと車両情報を統合したIVI(車載インフォテインメント)だ。この巨大で複雑なシステムに「絶対的な安心と快適」を吹き込み、世界中へ届けるーーそれがデンソーテンの使命である。
ここに登場するのは、その開発プロジェクトに挑んだ3人の若手エンジニア。異なる役割が交差する先には百万台規模の品質を支える誇りがある。情熱と技術が織りなす、挑戦の記録をお届けしよう。
Project Members
M.N.
HMIソリューション事業本部
PF開発部
経済学部
2023年入社(キャリア採用)
H.S.
HMIソリューション事業本部
ソフト基盤開発部
理学部物理学科
2022年入社(新卒採用)
E.K.
HMIソリューション事業本部
ソフト基盤開発部
情報知能学部
2023年入社(新卒採用)
Section.01
それぞれの役割から
製品の価値向上を追い求める
本プロジェクトは、数年スパンで進行する大規模な開発案件である。その中核に3人の若手エンジニアの姿があるのは、実力に応じて裁量を与えるデンソーテンの組織風土によるもの。彼らはそれぞれに次のような役割を与えられた。
まずM.N.だが、彼はIVIの基盤となるプラットフォームのカスタマイズを担当。特に注力したのは、システム起動の高速化だ。「エンドユーザーがクルマのエンジンをかけてからIVIが使用可能になるまでの時間を短縮し、ストレスのない操作環境を提供することがミッションでした」と語る。
一方のH.S.は、ユーザーからは不可視な領域である「故障診断」および「出荷前検査」のソフトウェア開発を担った。異常検知による事故防止や不具合発生時の原因特定などが主な任務だ。「製品の信頼性と安全性を支えるための縁の下の力持ちという位置付けですね」と述べる。
そして機能アプリ全体の繋ぐ役割として、ソフトインテグレーションを担当するのがE.K.だ。ソフトウェアの複雑化にともない、CI/CD※を活用した評価プロセスの自動化を構築。「常に最高品質をタイムリーに届ける仕組みをつくり上げることでプロジェクトに貢献しました」と語る。
担当フィールドは異なるが、自分たちの取り組みが製品全体の価値および顧客の安心に直結するという認識は共通していた。順調に役割を果たしていた彼らだったが、プロジェクトが佳境を迎える中、想定外の難題に直面することになる。
※CI/CD(継続的インテグレーション/デリバリー)=常時ソフトウェアを更新・テストし、バグなどの問題を早期発見する手法。
Section.02
3人のエンジニアたちの前に
立ちはだかった壁
M.N.が対峙したのは起動時間の「バラつき」だった。起動高速化において、目標値の達成と同等に重要なのが安定性だ。しかし、試行のたびに起動秒数が変動する不安定な動作が確認された。「目標値を満たすだけでなく、毎回きちんと安定していることが必須条件でした。発生条件の調査、計測環境に問題がないかに加えて、影響が考えられる箇所のソースコードを詳細に調査しましたが、なかなか原因を特定できず、先が見えない状況が続きました」とその時の苦慮を語る。
同時期、H.S.は出荷前検査の最終工程における遅延問題に対応していた。検査痕跡を削除して製品を出荷状態に戻すコマンドを実行した際、コマンド完了までに約90秒の遅延が発生することが判明したのだ。百万台規模の量産ラインにおいて、このタイムロスは致命的なリスクとなる。「再起動時には全アプリが起動するため、要因の切り分けが非常に困難でした。現象初見時は解析の着手点に関する知見もなく、手探りの状態からのスタートでしたね」と苦笑する。
機能アプリ全体の統合を担うE.K.のもとには、顧客へのリリース数日前に「特定環境下のみで発生する不具合」が報告された。納期が秒読みとなる中、自チームの環境でのみ再現されるトラブルは原因の特定が難航。「現場には重苦しい焦燥感が広がりましたが、何としても解決しなければという強いプレッシャーが、逆にチームの結束力を高める結果となりました」と当時を振り返る。
いずれの課題も、机上の設計を超えた実機ならではの複雑性が引き起こしたものだった。では彼らはこの難局をどう乗り越えたのか?
Section.03
個の技術力とチームの
結束力が一体化する風土
直面した技術的難題に対し、3人が選んだのは「独りで抱え込まない」という選択だった。実力主義の風土の中にあっても、いざという局面で力を発揮したのは「組織としての総合力」である。
M.N.は自ら実機デバッグを繰り返しながら、メンバーやビジネスパートナーへ状況を詳細に開示。およそ1ヶ月にわたって出口が見えない状況が続いたが、周囲の意見を仰ぐことで原因を特定した。「チームとして課題に向き合う体制を築けたことに達成感を感じています」と、孤軍奮闘では到達し得なかった解決を振り返る。
H.S.も自身の仮説を整理した上でチームへ共有することを徹底。リーダーや他機能の担当者と議論を重ねることで手探りの状態から問題の構造を解き明かした。「日常的に発言しやすい環境があったことが大きく、コミュニケーションの重要性を実感しました」と笑顔を見せる。
E.K.の現場でも突破口となったのはチームの支えだ。他プロジェクトのベテランや別チームの知見を借り、様々な条件を切り口に原因を切り分けた。メンバーたちが手分けして包囲網を狭め、解決の糸口をつかみ取った。
これらの突破劇は、互いの専門性を尊重し、部門の垣根を越えて助け合う文化があったからこそなしえたものだ。このようにデンソーテンでは個の技術力とチームの結束力が交差し、次世代のモビリティ社会を支える信頼を育んでいるのである。その風土こそが仕事の醍醐味につながっているのは、言うまでもないことだろう。

