【専門医直伝!】運転中の仮眠は「15分」が鉄則?事故を防ぐ休憩術と安全管理
社用車を運転するドライバーにとって、業務中の眠気は交通事故やヒヤリハット引き起こす大きなリスクです。一方、ビジネス現場の新常識として「日中の仮眠」が効果的だと聞いたことがある人も多いはず。その話は本当に正しいのでしょうか?
そこで、仮眠の有効性や効果的なとり方、ドライバーが抱く疑問、そして安全管理まで徹底解説いたします。「こころ・睡眠」の総合クリニック・上島医院(大阪狭山市)で院長を務める渥美正彦氏(日本睡眠学会認定 睡眠医療認定医)に話を伺いました。
目次
1. 科学的に見た「適切な仮眠時間」とは?
一言で「仮眠」といっても、実は明確な定義は難しいもの。渥美氏によると、「主睡眠の50%未満」または「90分未満」の睡眠※を指すそうです。
また、仮眠の長さによって効果は変わります。適切な仮眠時間を守れば、疲労回復や集中力向上が期待できる一方、眠りすぎると目覚めた後にかえって眠気や倦怠感が増すことがあります。ドライバーが正しいメカニズムを理解しておくことは、事故防止の観点からも重要です。
※参照:David F. Dinges『Sleep and Alertness: Chronobiological, Behavioral, and Medical Aspects of Napping』(1989)
ベストは「15〜20分」のパワーナップ
短時間の仮眠を「パワーナップ」と呼ぶことがあります。この言葉は、アメリカの社会心理学者であるジェームス・マース氏の研究をもとに1990年代後半から広がり、のちに日本でも使われるようになりました。昼休みなど業務中の隙間時間を利用して15〜30分程度の仮眠を取ることで、生産性や集中力を回復させるという考え方です。
渥美氏によると、こういった隙間時間にとる短時間の仮眠は、「15〜20分」が丁度よい長さとのことです。その理由は、睡眠の段階的な構造にあります。人間の睡眠は大きく「ノンレム(Non-REM)睡眠」と「レム(REM)睡眠」に分けられ、眠り始めるとまずノンレム睡眠の浅い状態から徐々に深い状態(N1→N2)へと移行します。

渥美氏が作成したスライド「YouTuber・睡眠専門医と学ぶ仮眠の科学」より抜粋
【専門家の解説】
渥美氏:N1は、いわゆる「うとうと」状態で、本人は「起きている」と感じていることが多いです。「すやすや」状態のN2になると本人に起きている意識はありません。入眠からN2に達するまでにかかる時間は、個人差や年齢差などはあるもののおおよそ10〜15分。そのため、15分前後の仮眠時間が、多くの人にとって脳の覚醒・疲労回復・集中力向上のバランスが最もよい長さとされています。
仮眠の効果を最大化するには、N2(浅い眠りの第2段階)まで到達することが大切です。N1止まりの仮眠に比べて、N2まで入った仮眠の起床後は、作業中の見落とし率も上がりにくいことが研究から示されています。タイミングの目安としては「もう少し気持ちよく寝ていたいな」と感じるくらいで目覚めるのが最も効果的です。
クルマのシートを倒したり、いっそ寝転がったり、各自が寝やすい姿勢でOKですが、あまり快適にしすぎて深く眠りすぎないように注意してください。

医療法人上島医院 院長 渥美正彦氏
30分以上の仮眠は逆効果になり得る?
仮眠が30分を超えると、深い眠り(N3=徐波睡眠)に入る可能性が高まります。特に、睡眠不足のドライバーや40代前半までの比較的若い世代は、短時間でN3へと移行する傾向があります。
主睡眠であれば、N3の睡眠は脳と体の回復にとって非常に良いものですが、「仮眠」となれば話は別です。N3に入った状態で無理に起こされると、脳がその状態を維持しようと抵抗します。これが「睡眠慣性」と呼ばれる現象です。
【専門家の解説】
渥美氏:「睡眠慣性」が起こるほど深い仮眠をとってしまうと、起床後に倦怠感・判断力の低下・方向感覚の乱れを招くことがあります。こうした状態で自動車を運転することは、交通事故のリスクを高める危険な行為だと言えるでしょう。
2. すっきり起きるための「仮眠テクニック」
仮眠の効果を最大化するには、時間の長さだけでなく、「寝る前の準備」と「起きるタイミング」にも工夫が必要です。カフェインの摂取タイミングや仮眠を取る時間帯を意識するだけで、目覚めの質は変わります。
仮眠を取るべき「魔の時間帯」
人間の体内時計(サーカディアンリズム)の仕組みにより、1日のうちに睡魔を強く感じる時間帯が2回あります。午前2〜4時と、午後2〜4時の時間帯です。この時間帯に眠気のピークに達するのは生理現象で、バスやトラック、タクシーなどのプロドライバーも例外ではありません。
主睡眠でしっかり眠ることはもちろんですが、特に多くの人が活動している午後の「眠気のピーク」を見越して、予防的に仮眠(昼寝)を組み込むことも重要です。

渥美氏が作成したスライド「YouTuber・睡眠専門医と学ぶ仮眠の科学」より抜粋
仮眠前にカフェインを摂る「カフェインナップ」
「カフェインナップ(コーヒーナップ)」とは、仮眠の直前にコーヒーや緑茶などカフェイン入りの飲み物を摂取してから眠るテクニックです。仮眠前に摂取しておくことで、目覚めるタイミングでちょうどカフェインの覚醒効果が現れ、仮眠のリフレッシュ効果とカフェインの覚醒効果が重なる、とされています。
【専門家の解説】
渥美氏:意外かもしれませんが、仮眠の前に「何分後に起きよう」と頭の中で意識するだけでも、目覚めやすさが変わります。就寝前に起床時刻をイメージすると、その時間に向けて体内では覚醒ホルモン(コルチゾール)の分泌が高まることが知られています。
3. ドライバーも管理者も知っておきたい「脳と疲労」
この章では、現場のビジネスパーソンやドライバー、安全運転管理者が抱える「眠気への疑問」を渥美氏に伺い、Q&A形式で解説します。睡眠医学の知見にもとづいた安全運転への理解を深め、ぜひ日々の業務に活用してください。

インタビュー中の様子
Q1:高速道路や単調な道を走っていると眠くなるのはなぜ?
渥美氏の回答:人間の脳はむしろ「睡眠状態が自然」という考え方があり、外部からの変化・刺激・危険のサインを取り込むことで覚醒を維持しています。カーブの多い道路では「この道は注意しよう」と意識したり、ハンドルをこまめに操作したりすることが覚醒刺激になりますが、単調な直線が続く環境では刺激が減少するため、覚醒レベルが自然と低下していきます。
特に注意すべきは「マイクロスリープ(微小睡眠)」と呼ばれる状態です。本人が「起きている」と感じている間に、数秒〜10数秒の間だけ浅い眠り(N1・N2)に入り込む現象を指します。先ほど述べたように、本人は「眠いのを我慢している」感覚ですが、外から観察すると意識が落ちては戻ることを繰り返しています。
眠気を自覚してから意識低下までの時間は、思っているよりはるかに短いです。「眠い」と感じて対処しようとした時点で、すでに遅いことがほとんどです。言い換えれば、睡魔を抱えるドライバー本人が「危ない」と気づいて止まれる状況は、実際には非常に限られています。事故にならなかったのは運が良かっただけ、という場面が相当数あると考えておくべきです。本人の自覚や行動だけに頼る安全管理には限界があります。
Q2:運転中に眠気を感じてしまった場合の対処法は?
渥美氏の回答:窓を開けて空気を入れ替える、大きな声を出したり歌ったりする、ガムを噛むといった行動は、外部刺激によって一時的に覚醒レベルを引き上げる効果はあります。しかし、その持続時間は長くても10分程度とされています。また、眠気そのものを解消しているわけではなく、あくまで先送りにすぎません。眠気は意志の力では制御できない生理現象であると認識しておくことが重要です。
管理者の立場から言えば、眠そうなドライバーを叱っても根本的な解決にはなりません。「なぜそういう状態になったのか」を一緒に考える方が、健康起因事故を防ぐ安全管理としても効果的だと言えます。

Q3:どの程度の症状で病院にかかるべき?
渥美氏の回答:ひとつの見方として、眠いと感じてから実際に眠ってしまうまでの時間があります。この時間が8〜10分を下回るようであれば、知らないうちに眠り込むリスクが高い状態です。「気づいたら寝ていた」ことがしょっちゅうあるようなら、専門医に相談することをお勧めします。
また、「眠い」という症状の背景には、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害だけでなく、そのほかの問題が隠れていることがあります。貧血や甲状腺機能の低下、うつ病なども、「だるい・ぼんやりする・眠い」という感覚として現れるんです。眠気や倦怠感で困っているなら、「睡眠不足の問題」だと自分だけで決めつけず、まず医療機関を受診してください。
Q4:企業(管理者)は従業員の仮眠をどう捉えるべきか?
渥美氏の回答:「仮眠=サボり」という意識が職場に根強いと、従業員は眠気を感じていても休憩を取りにくくなります。しかし睡眠医学の観点からは、仮眠は業務をやり遂げる生産性を維持する活動だと解釈することができます。
社用車などの業務運転においても同じです。例えば外回りの出発前や午後に帰社した際に眠そうにしている従業員がいたら、「15分だけ休んで来なさい」と指導できる環境である方が、その後の事故率は下がりますし、業務効率も改善するでしょう。
実際にそうは言いづらい職場が多いとは思いますが、たった15分の仮眠で安全性や生産性が高まるのですから、労務管理の観点からもぜひ積極的に仮眠を取り入れてほしいです。
加えて、前提として見直していただきたいのが、日本人の睡眠時間に対する認識です。「8時間も寝るなんて長過ぎる」という感覚は、世界的に見ても珍しいものです。慢性的な短時間睡眠の状態で働くドライバーが多い職場では、まず日々の睡眠時間を確保して過労運転を防ぐことも、健康経営に向けた大切な取り組みです。
4. 「人の努力」+「通信型ドライブレコーダー」で運転管理をより安全に
正しい仮眠の知識と職場の制度整備は、事故防止の重要な基盤です。これは営業車などを扱う白ナンバーの事業者においても、営業運行を行う緑ナンバーにおいても同じことが言えます。しかし、人間は体調や環境によって予期せぬ眠気に襲われることがあります。
個々の健康管理や職場の働き方改革、安全教育などに加えて、先端機器の導入でDX化・業務効率化を行うことで、より実効性の高い安全管理が実現します。最後に、渥美氏から運転中の睡眠をテクノロジーで早期発見する大切さを伺いました。

人間はミスをする生き物。だからこそ技術で補う
渥美氏:通常、睡眠の状態を正確に読み取るには、医療機器を使って脳波などを測定しなければなりません。ただし、まぶたの閉じ具合や視線、手・頭・体の動きなどからも、一定程度を読み取ることは可能です。
一部の通信型ドライブレコーダーにあるように、車内カメラの映像をAIが画像認識して、居眠り運転を早期に検知する機能は有効だと考えています。繰り返しになりますが、眠気は本人が自覚した時点ではすでに手遅れになっていることが多く、外側から客観的に状態を把握して早めにアプローチする仕組みは、医学的にも理にかなっていると思います。個人的には、こうしたテクノロジーへの期待はとても大きいです。
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5. デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み

POINT1: トラブルをふせぐ
メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体で運転席の視界を確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方もカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。
POINT2: 事故をふせぐ
人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。
POINT3: ムダをふせぐ
Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や「運転日報・月報の自動作成」、「他社アルコール検知システムとの連携」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。
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Offsegで、社用車の運行管理と安全運転管理をスマートに。日々の管理業務の手間を省きつつ、安全運転管理を強化します。
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