近年、大手物流企業の点呼体制の不備が報道で取り上げられました。こうした背景から、企業の車両管理やコンプライアンス体制に対する注目は高まっています。報道を受けて「自社の点呼や運行管理は適切なのか」と不安を感じる安全運転管理者や総務・車両担当者の方も多いのではないでしょうか。

点呼とは、形式的な確認ではなく法令で定められた安全確保のための重要業務です。本記事では、点呼の基本的な定義から具体的な実施方法、点呼不備による法令違反・罰則リスク、そして確実に運用するための管理手法をまとめました。

【この記事のポイント】

  1. 点呼の定義と「白ナンバー」事業者に求められる義務
    法令で定められた安全確保業務の定義と、2022年からの義務化範囲を整理。
  2. 乗務前・中間・乗務後、各タイミングでの「確認手順」
    「乗務させてよいか」を判断するチェックリストから、実施のタイミングまで網羅。
  3. 点呼不備がもたらす「行政処分」と「社会的リスク」
    不備や未実施が、車両停止処分や企業の信用失墜に直結する具体的なリスクを解説。
  4. 遠隔点呼・IT点呼を成功させる「3つの運用ポイント」
    なりすまし防止や測定結果の使い回しを防ぐなど、非対面でも精度を落とさない運用ノウハウを紹介。
  5. 通信型ドライブレコーダーによる「点呼の質」の向上
    自己申告に頼らない客観的な運転データ(急挙動など)を、具体的な安全指導に活かす方法を提示。

1. 点呼とは?

点呼は、事業者に義務付けられた重要な安全管理業務です。ここでは、安全運転管理における点呼の役割を明確にします。

点呼の定義と法的根拠

点呼とは、運行管理者や安全運転管理者がドライバーに対して対面で、体調や様子、車両の状態を確認し、そのまま運転させて問題ないかを判断する法令で定められた業務です。

道路運送法や貨物自動車運送事業法では、運転者の酒気帯びの有無、疲労・健康状態、日常点検の実施状況などを点呼時に確認することが求められています。これは貨物や旅客を運送する営業車(緑ナンバー)の車両向けの義務ですが、2022年より酒気帯びの有無に関しての確認について、白ナンバーの車両を一定台数以上保有している事業者も義務となっています。

点呼を適切に実施することで、ヒューマンエラーや重大事故のリスクを低減し、企業としての安全管理体制を支える役割を果たします。

運行の流れで見る3つの点呼(乗務前・中間・乗務後)

点呼は、運行の各段階に応じて適切な実施が重要です。法令では、乗務前・中間・乗務後のそれぞれのタイミングで点呼し、継続的に安全を確認することが求められています。ここでは、各点呼の目的と主な確認内容を整理します。

点呼のタイミング 主な確認内容 目的
乗務前点呼 酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足の有無、日常点検の実施状況 ドライバーを「乗務させてよいか」を最終判断し、事故リスクを事前に排除する
中間点呼 体調や疲労の変化、運行状況、異常の有無 長距離運行や泊まり勤務中の体調悪化やトラブルを早期に把握する
乗務後点呼 運行結果の報告、酒気帯びの有無(復路での飲酒確認)、翌日の業務内容 運行中の問題点を把握し、次の安全管理・業務計画につなげる

上記のうち、乗務前点呼と乗務後点呼は、勤務時間の長さに関係なく必ず実施が求められる点呼です。

一方、中間点呼は、泊まり勤務や長距離運行などで出発前と帰庫後の両方を対面で行えない場合に、運行の途中で実施します。さらに、2024年に改訂された労働時間に基づいて分割休息を取る場合も、休息の開始時と終了時に点呼が必要です。

点呼の対象となる事業者

法律上の規定で言えば、点呼義務があるのは緑ナンバー事業者のみとなっています。しかし、白ナンバーの車両であっても一定台数以上を保有する事業所では、安全運転管理者の選任が義務付けられており、運転前後の確認が求められるなど、緑ナンバーの点呼業務に近い運用が求められます。

特に近年は、白ナンバー(社用車)を所有している事業に関してもアルコールチェックの実施と記録保存が義務化されました。定員11人以上の車1台以上、またはその他の社用車5台以上を保有している事業所が対象で、業務運転者全員が対象となっています。

運転者の酒気帯び確認は、避けて通れない管理項目となりました。社用車を複数台管理する企業にとって、今や点呼は必須のリスク管理業務といえるでしょう。
白ナンバー車両のアルコールチェック義務化について、以下の記事でも解説しています。
内部リンク:白ナンバーのアルコールチェック義務化|実施方法と対応すべきこと

2. 点呼の具体的な方法と必須チェック項目

点呼で確認すべきポイントが明確になっていれば、より確実な運用につながるでしょう。ここからは、運行管理者が明日から使える点呼の運用ノウハウを紹介します。安全運転管理者もこのノウハウを活用すれば、よりリスク管理のできた確認業務を行うことができます。

点呼の必須チェック項目リスト

ここでは、法令で求められる内容をもとに、点呼で押さえておくべき必須チェック項目をリスト化しました。

【運転者の健康状態】
□ 体調不良や発熱などの症状はないか
□ 顔色や表情、発声に異常はないか
□ 強い疲労感やだるさはないか
□ 服用中の薬が運転に影響しないか

【アルコールチェック】
□ アルコール検知器の測定結果に異常はないか
□ 呼気にアルコールのにおいはないか
□ 顔の赤みや言動に違和感はないか

【日常点検(車両)】
□ タイヤの空気圧は適正か
□ タイヤに損傷や異物が刺さっていないか
□ ライトやウインカーは正常に点灯するか
□ ブレーキに異常はないか
□ 異音や異常な振動などはないか
□ オイルやウォッシャー液は不足していないか

【携行品・法令装備品】
□ 免許証を携帯しているか
□ 免許証の有効期限は切れていないか
□ 車検証は車内に備え付けているか
□ 保険証書など必要書類は備えているか

参考:国土交通省

チェックリストは点呼簿への記録が法令で義務化されており、記録や保存に不備があると法令違反と見なされる可能性があります。点呼は、記録・保存までワンセットで管理することを意識しましょう。

点呼の運用手順

点呼は、乗務前・中間・乗務後で確認する内容が異なります。適切に実施するためには、流れを整理しておくことが重要です。ここでは、各点呼の運用手順をまとめました。

【乗務前点呼】
業務の開始前に、運行管理者が実施する点呼です。目安として、出発の10~15分前に行うことが望ましいでしょう。乗務前点呼の流れは以下のとおりです。

①アルコールチェック
②健康状態・睡眠状況の確認
③免許証の確認
④車両番号の記入
⑤服装・社員証の確認
⑥ネームプレートや携行品の確認
⑦ETCカード番号の記入
⑧安全指示事項の確認・記録
⑨車両の状態を確認

【中間点呼】
深夜や早朝にまたがる運行や拠点間の乗り継ぎがある運行など、乗務前・後の両方で対面点呼ができない場合、電話やITで中間点呼を実施します。中間点呼の流れは以下のとおりです。

①アルコールチェック
②健康状態・睡眠状況の確認
③運行状況・遅延・トラブルの有無の確認

【乗務後点呼】
運転者が業務を終了し、車両を車庫へ格納後、速やかに実施します。乗務後点呼の流れは以下のとおりです。

①車両に異常がないか運転者が目視で確認
②アルコールチェック
③健康状態の確認
④免許証の確認
⑤給油・洗車状況の確認
⑥アルコールチェックの測定結果が日報に反映されているか確認
⑦ネームプレートや携行品を持ち帰っているかを確認
⑧会議やイベントなどの情報が伝わっているかを確認
⑨翌日の出社予定を通知

なお、白ナンバー事業者の場合は、乗務前と乗務後にアルコールチェッカーを用いた確認が必要です。

点呼の記録と保存の方法

点呼は、記録と保存が重要です。点呼の実施内容を点呼記録簿として作成し、1年間保存することが法令で求められています。
点呼の記録方法にはいくつか選択肢があります。以下にそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。

記録方法 メリット デメリット
手書き(点呼簿) ・導入が簡単
・コストがかからない
・保管場所が必要
・検索性が低い
・改ざんリスクが高い
Excel管理 ・低コストでデータ化できる ・入力漏れや上書きの恐れがある
・管理者依存になりやすい
システム管理 ・検索や保存がしやすい
・改ざんリスクや監査対応に強い
・導入・運用コストが発生する

特に車両台数が多い事業所では、確実な保存と証跡管理の観点からシステム化が有効な選択肢といえるでしょう。

3. なぜ今、点呼が重要なのか?

管理者は点呼の意義を理解しておく必要があります。ここでは、点呼が重要性をコンプライアンスの観点から整理します。

安全運転管理と事故防止効果

点呼は、事故の予兆を事前に防ぐための重要な機会です。事故につながりやすい兆候は運行前に把握できることが多く、早期に確認できれば適切な判断が可能になります。

また、管理者と対面で点呼を行うことで運転への自覚と緊張感が生まれ、気の緩みを防ぐ抑止力にもなります。

管理者としての法的責任

点呼は法令で定められた管理者の義務です。記録が不十分または未作成の場合、管理責任を厳しく問われるリスクが高まります。
一方、適正な点呼記録は、万が一事故が発生した際に会社が必要な安全管理を行っていたことを示す重要な証拠となります。

4. 点呼不備の罰則/法令違反となるケース

点呼を行わないことや記録を残していないことが、思わぬ法令違反につながる可能性があります。ここでは、点呼の不備がどのように罰則や行政指導につながるかを整理しました。

点呼不備の行政処分と罰則

点呼の不備は、行政処分や罰則につながる重大な問題です。ここでは、どのような処分が想定されるかを表にまとめました。

区分 主な違反内容 想定される処分・罰則 影響の大きさ
運送事業者(緑ナンバー) ・点呼未実施
・記録不備
・安全管理体制の不備など
・車両停止処分
・事業停止処分など
事業継続や売上に直結する重大な影響
白ナンバー事業者 ・点呼相当の確認不備
・アルコールチェック不履行など
・安全運転管理者の解任命令
・是正措置命令など
管理体制の見直し命令、対外的信用低下
管理者(個人) 飲酒の兆候を把握しながら運転を黙認 酒気帯び運転幇助罪などに問われる可能性 個人責任の追及、社会的信用の失墜

近年は、初違反であっても是正指導にとどまらず厳しい行政処分が下される傾向です。点呼の不備は、経営・組織・個人すべてに影響するリスクがあります。

点呼の記録が残っていないことの重大リスク

点呼で注意したいのが、点呼を実施したつもりで記録に残っていない状態です。事故が発生した場合、調査や訴訟で点呼記録の内容が企業の安全管理体制を判断する重要な材料になります。

点呼の記録は、企業が管理責任を果たしていたことを示す客観的な証拠です。これが存在しない、あるいは内容が曖昧だと事業者の責任を厳しく問われるでしょう。

また、事故後に記録を作成することや虚偽の内容を記載する行為は、発覚すれば社会的信用を失墜させる重大なリスクを伴います。点呼の記録は、正確に残すことが不可欠です。

遠隔点呼に潜むリスクと安全に運用するための3つのポイント

遠隔点呼やIT点呼は、直行直帰や人手不足の対策として有効です。一方で、思わぬ抜け穴が生まれることもあります。ここでは、遠隔点呼に潜むリスクと安全に運用するためのポイントを整理します。

ポイント① 本人確認の精度を高める
カメラを使った遠隔点呼では、映像の映り方そのものが確認の精度を左右します。カメラは、表情がはっきり分かる明るさを確保することが大切です。また、顔だけでなくアルコール検知器を操作している手元まで映る角度にする、マスクや帽子で顔が隠れないようにするなどの配慮も必要です。
毎回同じ場所・同じ構図で点呼を行うと、遠隔点呼での本人確認の信頼性をより高められるでしょう。

ポイント② その場で測定された記録であることを確保する
遠隔点呼では、測定のタイミングと運転開始が離れないことが重要です。測定後すぐに運行を開始するルールを設けることで、確認の実効性が高まります。

また、過去の測定結果の使い回しを防ぐためにも、その場で本人が測定したことが分かる運用を意識しましょう。例えば、点呼時の時刻が分かる画面や周囲の状況と一緒に測定の様子を映す、管理者と会話しながら測定を行うといった方法が有効です。

ポイント③ 指示が確実に伝わる体制を整える
遠隔点呼は、手順と伝達方法を明確にしましょう。異常があった場合の連絡方法や、運転を見合わせる場合の報告ルールがあれば、点呼の実効性につながります。

例えば、「アルコール反応が出た場合はエンジンをかけずに待機する」「代替ドライバーの手配があるまで車両を動かさない」など、具体的なルールを共有しておくと現場で判断にばらつきが生じることも防げます。

5. 形骸化させない点呼の仕組み

点呼を「やっているだけ」の作業にしないためには、仕組みそのものを見直す必要があります。ここでは、通信型ドライブレコーダーの活用を中心に、安全管理のレベルを引き上げる考え方を解説します。

システム活用による点呼管理の効率化

点呼を人の手に頼って管理する方法には、限界があります。手書きの記録簿やExcel管理では、記入漏れや確認忘れが発生しやすく、後からの修正や改ざんを完全に防ぐことも困難です。車両の管理台数が増えるほど管理者に負担がかかるでしょう。

一方、点呼をシステム化すれば、アルコール検知結果や点呼の内容をクラウドで一元管理でき、記録を自動保存します。必要な情報もすぐに検索できるため、管理の手間を減らしながら、確実で抜け漏れのない運用が実現できます。

運転データで裏付ける点呼管理

点呼には、体調や状況などドライバーの自己申告に頼らざるを得ない側面があります。しかし通信型ドライブレコーダーを活用すれば、実際の運転データから客観的な事実を点呼に組み込むことが可能です。例えば、乗務後点呼の際にその日の急ブレーキや危険挙動の映像を管理者と確認すれば、具体的な振り返りや指導につながるでしょう。

デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」は、点呼の記録と運転の映像を紐づけて管理できます。点呼を単なる確認作業から、気づきと学びのある教育の場へと進化させることが可能です。記録と実態が一致した点呼は、新しい安全管理のスタンダードといえるでしょう。

6. デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み

POINT1: トラブルをふせぐ

メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体は、運転席からの視界もしっかり確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方をしっかりカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。

POINT2: 事故をふせぐ

人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。

POINT3: ムダをふせぐ

Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や「運転日報・月報の自動作成」、「他社アルコール検知システムとの連携」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。