近年、飲酒運転やあおり運転、高速走行による事故が続き、危険運転への関心は高まっている傾向です。それに合わせて法律も強化され、2025年には危険運転致死傷罪の基準が数値化される方向で改正が進んでいます。
そこで今回は、危険運転致死傷罪の基本や最新の法改正のポイント、危険運転を「しない・されない」ための対策をまとめて紹介します。安全運転を習慣にし、自分や周りの命を守るための知識としてお役立てください。

【この記事のポイント】

  1. 危険運転致死傷罪の基準が変わる?
    最新の法改正ポイントがわかり、判断基準の変化を理解できます。
  2. 危険運転とは何かを明確化
    法律上どの行為が危険運転に該当するのかが整理できます。
  3. 危険運転の8類型を一覧に
    具体的な危険運転行為を把握でき、リスク理解が深まります。
  4. 危険運転の罰則内容を解説
    致死傷罪・準致死傷罪・妨害運転罪の違いを正しく理解できます。
  5. 危険運転の防止策を実践化
    “しない・されない”ための対策が学べ、事故防止に役立ちます。

1. 危険運転とは何か?

まず危険運転の全体像をつかむために、運転に関する法律を確認しましょう。どの行為が危険運転とみなされるのかを理解することが対策と防止の第一歩です。

法律で定められた危険な運転行為

「危険運転」とは、正常な判断や操作ができない状態での運転、極端な高速度での走行、意図的な赤信号無視など、重大な交通リスクを招く行為として、以下のように法律で区分されています。

参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

法律が整備されるまでの経緯

危険運転に関する法整備は、深刻な事故を背景に段階的に進められています。1990年代後半、悪質な飲酒運転による事故が相次ぎました。

しかし、当時の法律では「業務上過失致死傷罪」で軽い処罰に留まるという問題がありました。「単なる過失ではなく、より重い処罰が必要」との世論を受け、2001年に新設されたのが「危険運転致死傷罪」です。

さらに2013年に「自動車運転処罰法」として体系が再編され、危険運転の範囲整理に加え、過失運転や準危険運転も広く包括されました。また2020年には「妨害運転罪」が創設され、悪質な運転行為に対する法的枠組みが一段と強化されています。
参考:危険運転致死傷罪等の改正の経緯|法務省

2. 2025年最新:法改正で進む厳罰化の動向

現行制度は危険運転の基準が抽象的で、司法判断にばらつきが出る点が課題です。この課題を受け、速度超過や飲酒運転の基準を数値化する法改正が検討されています。以下に、2025年9月29日に法務省が提示した数値基準案をまとめました。

スピード違反の数値基準

スピード違反について政府は、「何 km/h 超過すると危険運転とみなすか」を数値で示す案を検討しています。従来の抽象表現を明確化し、判断基準の統一を図ることが狙いです。

検討中の数値基準案は、速度超過の程度によって危険運転に該当するラインを定める構成となっています。

道路の種別 危険運転の判断ライン
A案 B案
一般道(最高速度60キロ以下) 40キロ超過 50キロ超過
高速道路(最高速度60キロ超) 50キロ超過 60キロ超過

従来あいまいだった「高速度」を、道路環境に応じて明確な数値で区切ることで、より統一的で判断しやすい基準を目指す構成となっています。

飲酒運転の数値基準

飲酒運転についても、現行制度では「飲酒の影響で正常な運転が困難な状態」という抽象的な表現が基準となっています。この表現の幅広さから、どの程度の飲酒量が危険運転に該当するのか、判断が分かれることが課題です。

そこで数値基準案では、明確な線引きを設けました。

A案 B案
呼気1リットルあたりのアルコール量 0.25mg以上 0.5mg以上

数値化することで判断基準が統一され、捜査や裁判、運転者教育にも活用しやすくなると考えられています。

3. 危険運転にはどんな行為が含まれる?

危険運転には、法律で定められた複数の行為が含まれます。自動車運転処罰法では、危険運転致死傷罪として8項目が規定されています。それぞれの要点を表にまとめました。

危険運転に該当する8つの行為 危険と判断される運転行動
1 正常運転困難(飲酒・薬物) 飲酒・薬物等の影響で、正常な運転操作ができない状態で運転する行為。
・飲酒量だけが基準ではなく、ブレーキ・ハンドル・認知判断が困難になるレベル。
2 制御困難な高速度 制限速度を大幅に超え、車両の制御が困難な速度域で運転する行為。事故の回避が不可能に近いレベル。
3 技能欠如運転 運転技能を欠く無技能(無免許、極端な未熟さ、身体状況の不備等)の状態。
4 著しく接近する妨害 走行中の車に対し、意図的に著しく接近して威嚇・妨害し、重大な危険を生じさせる速度で運転する行為。 あおり運転。
5 前方停止による妨害運転 走行車両の前方に割り込み、急停止または極端な低速運転で妨害する行為。急ブレーキによる威嚇・衝突誘発型のあおり運転。
6 高速道路での前方停止妨害 高速道路・自動車専用道路にて、走行車両の進行を妨害し、停止または徐行させる行為。高速道路で停車させる行為。
7 信号無視の危険進行 赤信号を故意に無視し、かつ重大な危険を生じさせる速度で運転する行為。
8 通行禁止道路の危険走行 通行禁止区域へ進入し、重大な危険を生じさせる速度で運転する行為。

これら8つの行為は、いずれも重大な事故につながる危険性が高いものとして、法律で明確に分類されています。まずは「どんな運転が危険運転にあたるのか」を正しく理解することが、安全対策の第一歩です。

4. 危険運転の罰則

危険運転は重大事故につながる可能性が高く、通常の交通違反より重い罰則が設けられています。その主な罰則を以下にまとめました。

罪名 法的概要 罰則
危険運転致死傷罪
(第2条)
飲酒や薬物の影響、極端なスピード超過など、法律で定められた8つの危険運転に該当する行為をし、その結果として人を負傷させたり死亡させた場合。 【死亡させた場合】1年以上20年以下の懲役
【負傷させた場合】15年以下の懲役(無免許の場合は6ヵ月以上20年以下の有期懲役)
準危険運転致死傷罪
(第3条)
飲酒や薬物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転し、人を死傷させた場合。または、特定の病気の影響により正常な運転ができない状態で運転し、人を死傷させた場合。 【死亡させた場合】15年以下の懲役(無免許の場合は6ヵ月以上20年以下の有期懲役)
【負傷させた場合】12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下の懲役)
妨害運転罪
(あおり運転)
他の車両等の通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反をした場合。 【交通の危険がある場合】最大で3年の拘禁刑・50万円以下の罰金。
【著しい交通の危険がある場合】最大で5年の拘禁刑・100万円以下の罰金。
【妨害運転】運転免許の取消。
【妨害運転で人を死傷させた場合】危険運転致死傷罪も合わせて適用。

引用:危険!「あおり運転」はやめましょう|警察庁

罰則の内容を正しく理解し「知っているからこそ防げる」状態をつくることが、事故やトラブルを避けるための重要なポイントです。

5. 飲酒・あおり運転をしない・されないために


危険運転は身近なリスクです。以下に整理した具体的な対策で回避しましょう。

“しない”ための教育

社員の危険運転を防ぐには、「何が危険運転に当たるのか」を正しく理解することが重要です。

通信型ドライブレコーダーで得られる運転データを活用すれば、運転傾向を客観的に把握でき、個別の改善指導に繋がります。本人が気づきにくいリスクも可視化され、安全運転意識の定着が期待できるでしょう。

あおり運転を“された”場合の対処

「周囲に配慮した穏やかな運転」を徹底しましょう。右車線を走り続ける、急に減速する、強引に合流するなど、トラブルに直面するリスクが高い運転を避けることが、危険回避運転の第一歩です。

万が一トラブルに巻き込まれた場合に備え、行動を共有しておくことも有効です。

ドライブレコーダーによる自動記録や運転挙動の検知機能を活用すれば、証拠の確保やトラブル対応の負担軽減にもつながります。結果として、運転者の安心感や企業のリスクマネジメントにも貢献するでしょう。

デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み

POINT1: トラブルをふせぐ

メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体で運転席からの視界を確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方もカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。

POINT2: 事故をふせぐ

人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。

POINT3: ムダをふせぐ

Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や「運転日報・月報の自動作成」、「他社アルコール検知システムとの連携」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。