「かもしれない運転」で交通事故を未然に防ぐ
―だろう運転との違いも解説―

教習所で学んだはずの「かもしれない運転」。しかし実際には、運転を日々繰り返しているうちに、この基本を忘れてしまった人もいるのではないでしょうか?本記事では、経験を重ねるほどおろそかになりがちな「かもしれない運転」の基本を改めて確認し、対極にある「だろう運転」との違いを交えながら、安全運転のポイントをおさらいします。
なお解説にあたっては、運転者教育で多数の実績を持つ株式会社寝屋川自動車教習所(ネヤガワドライビングスクール)で、約30年にわたって指導教官を務める稲岡正昭氏に話を伺いました。
かもしれない運転とは?だろう運転との違いも解説
事故を未然に防ぐ、かもしれない運転と、楽観的な判断による、だろう運転。この2つの違いを理解することは、安全運転を実践する上で重要です。運転免許を取る際に一度は学んだ内容ですが、まずは基本的な情報からおさらいします。
かもしれない運転は危険を予測する運転
かもしれない運転とは、運転中に起こり得るさまざまな状況を想定しながら、積極的に危険を予測する運転方法です。このような運転姿勢により、突発的な事態が発生しても適切な回避行動をとることができ、交通事故の防止につながります。
例えば、見通しの悪い交差点や急カーブにおいて「死角から子どもが飛び出してくるかもしれない」と考え、道路標示の有無を問わず確実に一時停止や徐行をする、といった行動が挙げられます。そのほかに、交差点での右折時に「対向車が予想以上のスピードで接近してくるかもしれない」と予測し、十分な安全確認を行いながら右折することも、かもしれない運転の一つの実践行動です。
【専門家の解説】
稲岡氏:かもしれない運転を一言で表すなら、「疑う」ことです。少しでも視界が悪いと感じたら、そのまま進むのではなく、確実に一度止まる。あるいはミラーに映らない死角の部分を目視する。こういった行動が大切です。
実際の道路状況では、対向車や自転車、歩行者が交通ルールを守らないこともよくあります。例えば青信号を通過するときであっても油断せず、前車との車間距離に余裕を持たせたり、アクセルを踏み込まずセーブした速度で走行したりすることも大切ですね。
そして、かもしれない運転で危険な状況を想定したら、次は「万が一のときはこう回避しよう」と、具体的な行動予測を立てておくことが大切なポイントです。

寝屋川自動車教習所 業務部 事業課 稲岡正昭氏
だろう運転はドライバーが都合よく解釈する運転
一方、だろう運転は、交通状況を楽観的に判断し、自分に都合の良い解釈で運転する行動のことです。例えば、「この時間帯に子どもはいないだろう」と考えて住宅街でスピードを出す、「対向車が道を譲ってくれるだろう」と安易に判断して交差点を右折するなどの行動が該当します。
慎重さの欠けた運転姿勢は、重大事故につながるリスクを低く見積もってしまいがちです。歩行者や他の車両の存在に十分な注意を払わない「動静不注視(安全運転義務違反の一つ)」による事故へとつながるおそれがあります。
■動静不注視などの「安全運転義務違反」について解説した記事はコチラ!
「安全運転義務違反」は重大事故の入口?弁護士が徹底解説
だろう運転をしてしまうドライバーの心理
だろう運転に陥らないよう注意すべきなのは運転初心者に限りません。運転経験が豊富なドライバーも要注意です。その理由は、だろう運転を引き起こしてしまう心理的な要因にあります。
運転への「慣れ」がだろう運転を引き起こす
日常的に運転をしているベテランドライバーほど、運転への慣れや過信から、事故リスクへの認識を鈍らせてしまう点に注意が必要です。特に、毎日同じルートを運転する社用車のドライバーは注意しましょう。
慣れ親しんだ道路であっても、天候や時間帯によってさまざまな危険が潜んでいます。例えば、晴天時の状況と雨や雪の降っている状況は異なりますし、学校や住宅街の周辺道路では通勤通学の時間帯に人通りが多くなります。普段は問題なく通過できる場所でも、予期せぬ事態はいつでも起こる可能性があることを考慮しておきましょう。
【専門家の解説】
稲岡氏:だろう運転は、「自分の運転は上手だ」と思い込んでいる方がする運転です。他人の運転を見て「トロトロするな」などと文句を言う人は結構いますよね。そういう話をする前提には、「自分の運転はきちんとできている」という考えがあるんですよ。
自分の運転技術を過信してしまう背景には、これまでに交通事故を起こしたことがない、といった経験による裏付けがあるかもしれません。ただし、それは「周囲が安全運転をしてくれたおかげで、事故を回避できた」という経験の積み重ねである可能性もあるわけです。その点を踏まえて、自身の運転行動をぜひ振り返ってみてください。
かもしれない運転は振り返りとトレーニングで身に付ける
では、かもしれない運転を実践するには、どうすればいいでしょうか。ポイントは、「運転の振り返り」と「危険予測トレーニング(KYT)」です。それぞれ具体的な方法を解説します。
日頃の運転習慣を振り返る
定期的に自分の運転を振り返ることはとても重要です。以下の一例ように具体的なポイントを設けてチェックする方法などが考えられます。
チェックポイントの一例:
・右左折時の安全確認を確実に行っていたか
・信号のない横断歩道で、必要に応じて一時停止したか
・前車との車間距離を適切に保てていたか
・駐車車両の脇を通過する際の速度は適切か
・薄暮の時間帯でライトを点灯したか
そのほかにも、「バック時には、同乗者が車外に降りて誘導する」や「一時停止の道路標示がある場所では、2段階停止を行う」など、各社が独自に設けている運転ルールを盛り込んでもいいでしょう。
なお、これらの基本動作の振り返りに加え、ドライブレコーダーの映像を確認することで、自身では気づいていない危険な運転習慣に気づくこともできます。

Offsegは事故リスクの高い12シーンをAIで検出し、警告・通知を行うことが可能。
【専門家の解説】
稲岡氏:定期的に自分の運転を見て、「あのとき一時停止が不十分だったな」とか「際どいタイミングで信号を通過してしまったな」と振り返ることは非常に効果的です。以前、弊社の高齢者講習でも、指導員とドライブレコーダーの録画映像を振り返る方法を実践していました。
多くの方が「自分はできている」と思っているのですが、映像を見ると、一時停止のつもりが実は少しずつ動いていて、徐行になっていることが多々あります。ドライブレコーダーの映像があれば一目瞭然で、受講者の方も納得され、その後の指導にもしっかり耳を傾けてくれるようになるんです。この傾向は法人向けの講習などでも共通しています。
自分の運転を振り返るのは確かに面倒かもしれませんが、だからこそ定期的に行う価値があるんです。

Offsegの録画カメラは約360度の撮影が可能。
リアカメラ(オプション)の搭載で後方のカバーも確実に。
シミュレーションで危険予測のトレーニングをする
具体的な交通状況を想定し、運転中に遭遇する事故やヒヤリハットが起こりやすい場面を抜き出し、その場面においてどんな危険要因が存在するのかシミュレーションを行う訓練も効果的です。この訓練のことを一般的に「危険予知トレーニング(略称:KYT)」と呼びます。
広く公開されている教材も多数あり、JAFが提供している「交通安全3分トレーニング」のほか、警視庁が提供する「危険予測トレーニング」や自動車事故対策機構(NASVA)の「危険予知トレーニングシート」などがあります。
これらの状況で起こりうる事態を予測し、適切な対応を考えることで、実際の運転における危険予測能力を向上させることが可能です。
■交通事故防止につながる対策例をまとめた記事はコチラ!
企業が実践する交通事故防止とは?現場の対策例をまとめて紹介
【専門家の解説】
稲岡氏:私たちが法人向けの安全運転講習を行うときは、危険予知トレーニングをグループワーク形式で実施します。例えば、見通しの悪い交差点で一時停止している状況で、カーブミラー越しに右から車両が、反対の左側からは自転車がこちらに向かって来るのが見えている、といったように、複数の危険要素を含めた場面を設定し、グループ内で「どうすれば事故を防げるか」を考えてもらいます。グループで考えるのは、1人の考えに限らず、多様な発見を引き出して全体で共有する意図があるからです。
ただし、座学での「わかっている」と、実車での「できている」は別物です。研修では想定されるリスクや正しい対処法をきちんと回答できても、実際の運転では一時停止をおろそかにしがちだったり、後方確認を怠りがちだったり、といったケースが少なくありません。そのため実車を運転する際は、座学で予測したことが実際の行動でも実践できているのか、重点的にチェックしています。

ヒヤリハット映像を用いたeラーニング資料。
自動で作成・配信でき、受講状況の把握も可能だ。
かもしれない運転は日頃からの意識付けが重要
ここまで、かもしれない運転とだろう運転のおさらいや、実践的なトレーニングの重要性などについて解説しました。最後に、社用車を運用する企業にとって大切なポイントを稲岡氏に伺いました。
何より管理者が率先して、安全運転を実践すること
稲岡氏:企業における安全運転の基本は、安全運転管理者などの教える側が率先して実践することです。反対に、彼らが基本を徹底できていなければ、どんなに指導を続けたとしても従業員には伝わらないでしょう。
部下は上司の取り組み姿勢を見ているものです。愚直に基本を守り続ける姿を見ているからこそ、従業員の行動も変わっていくのだと思います。交通事故を防ぐには特別なスキルや優れた運転技術よりも、かもしれない運転などの一度は学んだ基本を徹底することが肝要なんです。
デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み
POINT1: トラブルをふせぐ
メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体は、運転席からの視界もしっかり確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方をしっかりカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。
POINT2: 事故をふせぐ
人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。
POINT3: ムダをふせぐ
Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や「運転日報・月報の自動作成」、「他社アルコール検知システムとの連携」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。
社有車が交通事故を起こすと、損害賠償はもちろん、保険料のアップ、会社のイメージダウンなどさまざまな問題が発生します。
『Offseg』は社有車の安全運転管理をかんたんにおこなうことができるドライブレコーダー。データ収集・分析などを自動化し、運用の手間をかけずに交通事故を未然に防ぐことが期待できます。
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