株式会社デンソーテン(以下、デンソーテン)は社有車などに向けて、通信型ドライブレコーダー「G500Lite」のサービスを提供している。クラウドサーバーと連携し、車載器から録画したヒヤリハット映像をAIが自動で抽出する機能などが特徴だ。

社有車が交通事故を起こすと、人的・物的な損害だけでなく、会社の信用失墜にもつながる。そのため、各企業はドライブレコーダーなどの機器を導入し、交通事故の防止・削減に努めている。

しかし、事故を減らすためにはただ「録画する」以外の行動も必要になる。導入した機器の多様な機能を会社のニーズに合わせて使いこなすことも重要だが、並行して社内の取り組み体制を整備することも同等に重要だ。

大阪ガスセキュリティサービス株式会社では、警備員の駆け付けサービスやガス導管の保守など、安全安心な暮らしを支えるサービスを提供しつつ、日々安全運転の徹底も欠かさない。同社の取り組みを紹介しながら、企業における安全運転意識の向上というテーマについて考えていきたい。

駆けつけ警備と安全運転、日々のコミュニケーションが重要

――まずは御社の事業内容について教えてください。

若松氏:弊社の事業内容は、セキュリティ・緊急通報・警備防災・ガス導管保全・賃貸マンション管理があります。さらにセキュリティ事業はホームセキュリティやマンションセキュリティ、事務所や店舗向けの業務用セキュリティなどに分かれており、通報に応じて現場へ向かう「駆けつけ警備」を行っています。

――多彩な事業展開ですね。若松さんと細野さんはどのような業務にあたっているのでしょうか?

若松氏:セキュリティサービス部のビートエンジニア(※)チームに所属し、マネジャー代理を務めています。業務内容は全てのサービスステーション(待機所)の統括です。

※ビートエンジニア:機械警備隊員

社有車に乗り込むビートエンジニア

社有車に乗り込むビートエンジニア

細野氏:セキュリティサービス部は担当エリアを「ブロック」という区分で管理しています。私はそのうち、大阪市内を中心とした「大阪中央ブロック」のブロック長を担当し、主にトラブル対応など現場で起きた事象への対応を行っています。

――警備の仕事は緊急出動などがあって、日々の業務で安全運転に関する取り組みを継続するのは大変ではないですか?

若松氏:確かに「駆けつけ警備」は24時間365日体制で行うものです。交代勤務が前提になりますから、日々コミュニケーションを取ることが非常に重要になります。朝礼や点呼はもちろん、勤務の引き継ぎ時に現場のメンバーでドライブレコーダーの映像を振り返るなどしています。

細野氏:グループミーティングも定期的に行っており、ドライブレコーダーの映像を振り返りながらKY(危険予知)トレーニングなどをしています。また、毎月の末日に「安全の日」を設けていて、メンバー全員に改めて安全運転の注意喚起を行う機会にしています。

G500LiteはAIがヒヤリハット映像を抽出する機能(上)や、抽出したデータをもとに教育資料を作成するeラーニング機能(下)も搭載している。(資料提供:デンソーテン)

コメンタリー運転も日々の業務で

――そのほかにも安全運転に関するトレーニングを行っているんですよね?

細野氏:警備の仕事は毎年「現任教育(※)」を受けなければなりません。その中で必ず安全運転教育の時間を設け、部内で作成した資料を用いながら安全運転の指導をしています。

※現任教育:警備業者に義務付けられている法定教育のうち、現職の警備員を対象に行うもの。法改正などの知識習得や警備の技能向上を主な目的としている。

参考:一般社団法人 全国警備業協会

――全社員向けのマニュアルではなく、部署ごとに教育資料を作っているんですか?

細野氏:もちろん本社が作った安全運転教育資料もあります。ただ、われわれが所属するセキュリティサービス部は隊員の数が多いですし、緊急出動を行う業務特性上、本社の安全推進とは別に資料を作って教育しています。

インタビューに答える細野氏(左)と若松氏(右)

インタビューに答える細野氏(左)と若松氏(右)

――それほど徹底して安全運転教育をしているとは驚きです。さらに現場ではコメンタリー運転(※)も行っていると聞きました。

※コメンタリー運転:見たもの、確認したものを発声しながら運転操作を行うこと。コメンタリードライブとも言う。

若松氏:はい、日々の運転業務の中で実践しています。加えて、日本自動車連盟(JAF)の「交通安全3分トレーニング(※)」を社内教育に活用しており、「どこでコメンタリーすべきなのか」「どこに危険が潜んでいるのか」も合わせて考えるように徹底しています。

『交通安全3分トレーニング(危険予知クイズ)』日本自動車連盟(JAF)

――物流や公共交通関係ではない企業で、ここまで取り組んでいる事例は非常に珍しいのではないかと思います。会社全体で昔から安全運転には注力してきたんでしょうか?

若松氏:コメンタリー運転については、5年ほど前の社内資料には出てきますから、少なくともその時期には取り組み始めていました。

細野氏:実は、過去に社内で重大な人身事故が起きてしまったんです。先ほど述べた「安全の日」はそのときの教訓を風化させないように設けたものです。悲惨な事故を二度と起こさないように、さらに安全運転に関する取り組みを徹底するようになりました。

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