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沖縄の観光を安全で楽しんでもらうために。

早速ですが、この実証実験を行うに至った背景を教えていただけますか。

白石:2019年の初めにOTSレンタカーを運営する沖縄ツーリスト株式会社様(以下、OTSレンタカー)に一般商用車向け通信型ドライブレコーダー(G500Lite)の提案をさせていただいたことがきっかけで、4社合同の実証実験への挑戦が始まりました。OTSレンタカーは地元沖縄に根差し、地域を大切にする想いが強い企業です。沖縄県は道路渋滞と訪日外国人観光客(以下、インバウンド)が日本の交通事情に不慣れなため多発する交通事故が社会的な課題となっています。そのことを解消することで地域に貢献したいと考えておられました。我々はその解決策としてG500Liteとそれを活用するためのアプリを先行開発する提案を行ったことが実証実験につながりました。

どのような提案を行ったのですか。

藤尾:1つ目の提案は、観光型MaaSとして2019年9月にプレスリリースした運輸車両向け通信型ドライブレコーダー(G500)を活用した観光ルート動画生成システムです。タクシーに搭載した通信型ドライブレコーダー(G500Lite)の映像を活用し、過去に観光客が観光したタクシーの走行ルートをまとめた動画をweb上などで確認することができます。それを事前に閲覧することで観光地の分散に繋がり、渋滞を減らすことが見込まれます。また、直接的ではないですが事故の削減にもつながると考えています。
2つ目の提案は、通信型ドライブレコーダー(G500Lite)で収集した情報を元にデータ分析を行い、国籍ごとの運転傾向をまとめた動画を作成しました。インバウンドのお客様がレンタカーを予約した際にその動画を見ることで日本の交通事情を理解するための啓蒙となるようにしています。
3つ目は、顔認証によるスマートフォンを使ったレンタカーの鍵の開錠を提案しました。これにより、鍵の貸し出しが不要となり、受付業務の完全無人化につながります。レンタカー窓口業務の効率化になります。もちろん、新型コロナの感染リスクを最小限にとどめることにも貢献します。

提案の中でデンソーテンらしいポイントはどこでしょうか。

白石:提案をおこなった当時はMaaS※が注目されており、また、インバウンドへの需要の高まりと合わせて、他社も含めて様々な製品やサービスがありました。我々はお客様の困りごとに寄り添った提案を心掛け、「お客様の困りごとをすべてお聞きして、困りごとの一つ一つにスピーディに対応する」という姿勢で臨んできました。また、その小さな困りごとも含めてその解決の提案を繰り返しを行ったことがお客様に納得いただけたものと考えています。MaaS関連のサービス・製品を提供する競合は、我々より大きな会社が多く、そこで打ち勝つには大企業に出来ない小回りの利く提案を行うことです。お客様の困りごとを引き出して提案が行える。そこがデンソーテンの強みと言えます。顧客密着、まさにデンソーテンの創業の精神である「誠の精神」ですね。

これまでのモノづくりとは異なる発想でのアプローチサービスを基点とした開発

今回の実証実験はOTSレンタカー、デンソーテン以外に、OTSサービス経営研究所、アイ・ムーヴを含む4社での実施になると聞いています。OTSサービス経営研究所、アイ・ムーヴはどのような役割を持っているのでしょうか。

藤尾:提案の中で、国籍ごとにデータ分析を行いレンタカー貸出前に事前啓蒙を行う流れを説明しましたが、それを実現するためには予約システムを運用している会社と連携しなくてはいけませんでした。そこでOTSレンタカーの予約システムを担当するアイ・ムーヴを紹介いただき、一緒にやりましょうということになりました。そこでデンソーテンのデータ分析のアプリケーションを見ていただいたところ「まさにこれが僕たちの欲しかったものです!」と言っていただき、さらに協力関係が深まりました。

インタビューの中で、デンソーテンが提供するアプリケーションの話が出ましたが、今回の提案の中で、デンソーテンのどのような技術が使われているのでしょうか。

上松:今回開発したのは、スマホアプリと、スマホアプリと繋がるセンター側のアプリです。概要としては、お客様がレンタカーを予約した後に、観光ルートの提供、レンタカーを使用時の開錠、返却時の施錠、また返却処理をすべてシステム上のオンラインで終わらせるというところです。また、レンタカーを使っていただいたお客様のドライブレコーダーの映像を思い出としてもらうため、自動で簡単な映像編集を行いお客様に提供するという工夫もしています。 今回のポイントはアプリを作る際、他社より既存で提供されている技術を組み合わせることで、作り上げたことです。顔認識の技術はA社を使い、カギの開錠はB社といった様に、デンソーテンに無い技術は他社の技術を活用しました。それにより開発期間を短縮することにつながりました。もちろん、将来的に新しい技術が出た時には、差し替えや追加ができるような仕様にしています。

白石:デンソーテンのモノづくりで大きく変わったところは、以前であればキーレスの仕組みを開発するのであれば車載器からソフトまで全て開発していると思います。今回は、そうではなくサービスを開発したという点で大きな変化だと思います。何でもかんでも自前で作るのではなく、大事なコアになる技術は自前で作り、足りないところや周辺技術は外部リソースに頼るという新たな発想に意味があります。

これまでのモノづくりとは異なる発想でのアプローチだと、苦労された点もたくさんあったのではないですか。

藤尾:デンソーテンではMaaSとしての取り組みは始まったばかりです。次につなげていくためにお客様の心をしっかり掴む必要があります。ただ、そのために何をするべきなのか試行錯誤の日々です。社内で様々な部門と何度も打ち合わせを重ね、お客様にも何度も企画書を持って訪問しました。サービスの大枠が決まり、仕様に落とし込むため、関係者全員で必死にカタチにしてきました。今回はお客様の意見を取り入れながら、仕様を変えていきましたので、その経験がない分非常に戸惑いました。また、今年は新型コロナ禍で出張が制限され、お客様に直接お会いする機会が限られていましたので、その点も苦労しました。 ただ、お客様の意見を聞きながら仕様を変えていきましたので、OTSレンタカーからは「言ったことがカタチになって返ってくる!」と大変喜んでいただけました。苦労した分、非常にやりがいを感じました。 その他に、サービスと言う言葉に対する社内への理解が広がったように感じました。特に、お客様の困りごとに対し、どのようなサービスを提供したら喜んでいただけるのかという考え方が浸透し、前向きな意識の変化を感じています。お客様の意向を伺いながら小さな目標をコツコツ達成していくイメージで取り組んでいます。

車載器を作ってきたからこそできること先読みもデンソーテンの強み

取り組みの中で色々なことが分かって来たと思いますが、今後に向けた課題はどんなことでしょうか。

上松:もちろん良いことばかりではなく、課題もあります。1点目はビジネス化です。どのように収益化していくかは引き続き検討が必要です。2点目はインバウンドのお客様向けに、スマートフォンアプリのサービス提供が難しいという点です。海外の方が日本のスマートフォンアプリをダウンロードして使ってもらいにくいということです。逆を言うと、日本人でも海外のスマートフォンアプリをダウンロードして使うとなると言葉の壁もありますし、ハードルが高いですね。そういった点を踏まえて、コンテンツの提供の仕方を変える必要があります。

白石:今回の取り組みは、これまでやってきたことの積み上げです。過去からドライブレコーダーを扱い、事故低減への貢献をしてきたものと考えています。それに加えて、クラウドを使って、そこからのデータ分析での切り口で提案を行いました。2015年にG500Liteを企画し、作り込んできました。きっちり将来を見据えて作り込んできたからこそ、時流に合った分析ができる車載器となり、今があります。先読みもデンソーテンの強みだと言えると思います。


   まだまだ、課題は残されているものの、本インタビューを通じて、これまで車載器を作ってきたデンソーテンだからこそできるMaaSへの取り組みの一端を理解してもらえたのではないでしょうか。これからもデンソーテンの新しい取り組みを紹介していきます。

   *MaaS (マース):Mobility As A Services
2015年のITS世界会議で設立された「MaaS Alliance」によると、「MaaSは、いろいろな種類の交通サービスを需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合すること」と定義



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