環境問題を題材とした手作りのぬりえ絵本をフィリピンの子どもたちへ提供



ぬりえを手にして喜ぶ子どもたち


 今回は、デンソーテングループの中でSDGs活動に最も力を注いでいる、海外生産拠点であるデンソーテンフィリピンと、ファッションを通して持続可能な社会づくりを目指すNPO法人DEAR MEが、フィリピンの環境問題である海洋汚染やゴミ処理問題をテーマとした内容でオリジナルぬりえ絵本を手作りで制作し、2021年5月にフィリピンマニラ市内の子どもたちへ150部提供しました。
フィリピンでは、身近で起きている海洋汚染やゴミ処理問題などの環境問題を知らない子どもたちが多いのが現状です。また昨今の新型コロナウイルスの影響により、フィリピンでは2020年3月から現在まで、依然として厳しい外出規制が続いており、子どもたちは学校へ行けず、精神的ストレスが溜まっています。さらに、貧困地区の子どもたちはインターネット環境が整っていないため、オンライン授業を受けることも難しく、貴重な教育機会が失われています。
このような状況の中、「子どもたちに平等な教育機会を提供できないか」「環境問題を学べる機会を提供できないか」と両者で何度も議論を重ね、このぬりえ絵本を通じて環境問題を身近に感じてほしい思いから「Story Book」プロジェクトを企画しました。




フィリピンの子どもたちと共に夢をかなえる次世代教育プロジェクトを発足

デンソーテンフィリピンの地域社会への貢献を中心としたSDGs活動の知見、またDEAR MEが大切にしてきた夢とファッションの力を掛け合わせることで、「平等な教育」「環境問題」などのサステナブルな解決ができるのではないかと思いが一致し、子どもたちと共に夢をかなえる次世代教育プロジェクト『Dream For Our Future』を2021年1月に発足しました。

このように異業種である2者がタッグを組み、コロナ禍だからこそできることは何か?を考え、SDGs共同プロジェクト『Dream For Our Future』の活動をスタートさせました。今回のプロジェクトに携わった中心的存在のデンソーテン川端経営役員とDEAR ME小村理事に想いを語っていただきました。

そもそも異業種の2者がなぜこのような共同プロジェクトに取り組んだのですか?

小村:実は、デンソーテンフィリピンの川端元社長(現:デンソーテン経営役員)と同じ大学出身というご縁で。OB/OGが集まる大学の交流会で、話を重ねていくうちにお互いの企業・団体が社会貢献に注力していることがわかり、意気投合、一気に話が進みました。

川端:デンソーテンフィリピンが社会貢献活動に注力している中で、私自身として特に社会的弱者である“恵まれない子どもたちを何とか手助けできないか”という思いが常にありました。数年前の出来事ですが、あるものを使ってもらいたくて小学校を訪れ、プレゼントを渡したときに多くの子どもたちが笑顔いっぱいで喜んでくれましたが、ある子が学校に裸足で登校していたので、靴を持って伺うと、「こんな新しい靴を履いたことがない。履くと汚れるので履くのがもったいない・・・家族がいるのに私だけ履けない」と。その子には笑顔がありませんでした。
こういった自らの経験を話す中で、DEAR MEが貧困地区に暮らす子どもたちをメインに活動されていることを知り、協働していく決意をするまでお互い時間はかかりませんでした。


デンソーテン 経営役員 川端 信治(中央)

小村:ストリートチルドレンやフィリピンの貧困地区で暮らす子どもたちに対して活動していると、「貧しいのに、活き活きしていて幸せそう。」という言葉を聞くことがよくあります。もちろん、それも間違いではないのですが、私たちの勝手なものさしで子どもたちの幸せを測ることはできないですし、幸せそうに生きているからと言って、彼らの背景にある問題を無視することはしたくないと思っています。

川端:フィリピンの子どもたちは確かに良い笑顔をしています。ただその裏側には多くの人が知りえない色んな境遇、環境の子どもたちがおります。彼らに幸せとは何?と聞くとほぼ“家族”と答えます。すばらしいことですが裏を返せばと思うと・・・すごく考えさせられます。
そこから、デンソーテンフィリピンの従業員とDEAR MEに所属する学生さんも含め対話を重ねていき、ロックダウンの影響でフィリピンの子どもたちが教育機会を失っている現状に対して、両者で力を合わせこのプロジェクトを開始する運びとなりました。


NPO団体DEAR ME理事 小村 萌

川端:プロジェクト発足時はコロナの影響がここまで長引き、子どもたちへ影響があると想像もつきませんでした。コロナ禍の中、学校に行けないフィリピンの子どもたちに対して「平等な教育機会や環境問題を学べる機会を提供できないか」何度も話し合いを重ね、試行錯誤しました。

小村:議論を重ねる中で、両者に、未来世代により良い世界を受け継ぐこと、そのためには子どもたちの純粋な声を世の中(社会全体)に知ってもらうことが大切だという共通の価値観も生まれました。


デンソーテンフィリピンとDEAR MEのオンライン企画会議の様子

『Dream For Our Future』とはどういったプロジェクトですか?

川端:デンソーテンフィリピンとDEAR MEが協働し、フィリピンで平等な教育機会を提供し、持続可能な世界を実現する次世代教育を行うプロジェクトです。下記2点を目的として活動しています。
①持続可能な世界を目指し、地球環境を守るための次世代教育を行う
②実際に子どもたちが体験し、学べるコンテンツを提供し、子どもたちの創造力を育成する

小村:フィリピンの子どもたちの未来、そして地球への未来に対する夢を込めたプロジェクトにしようと『Dream For Our Future』というプロジェクト名に想いを込めました。
具体的には、現在3つのプロジェクトを考えています。

1、Story Book プロジェクト(2021年1月より活動開始、継続中)

環境問題を題材とした手作りのぬりえ絵本を制作し、環境問題を学んでもらう機会を提供

  

2、Dream Art プロジェクト(2021年7月始動予定)

子どもたちとともに海洋汚染問題やゴミ問題を学び、海洋ゴミでアートを共同制作(過去の活動写真)

  

3、Dream Planting プロジェクト(2021年7月始動予定)

子どもたちと共に植林を体験し、草木染めを使った洋服を制作しファッションショーで発信(過去の活動写真)




『Dream For Our Future』プロジェクトで苦労した点はありますか?

川端:新型コロナウィルスの影響が深刻なフィリピンでは、ロックダウンにより多くの人が外出規制を余儀なくされています。そのため、企画案を練る段階でも、子どもたちの置かれている状況を考え、活動ができないと判断せざるを得ないことが多々ありました。


現地NPO団体の協力によりオンラインにて フィリピンの子どもたちへインタビュー

小村:私たちも現地のことを想像すると、辛くなることもありました。現地の状況も実際に見に行くことができませんし。先ほども背景のところで話しましたが、子どもたちがロックダウンにより外出できなかったり、オンライン設備が整っていない居住環境という点で、できることが限られてしまいました。
それでもそのような苦しい状況にいる子どもたちのために今この状況だからこそ何かしたいという両者の想いがモチベーションになったと感じています。

子どもたちのための活動であるのに、子どもたちと直接コミュニケーションを取ることが難しい状況で、現地NGO団体の協力にもとても助けられました。「子どもたちの声を聞きたい」という私たちの想いから、子どもたちにインタビューを行ってくれました。
コロナ禍での活動は苦労する点もたくさんありますが、各所が業界を超えて連携すれば成し遂げられるのだと感じました。

なぜ第1弾の企画はオリジナルぬりえ絵本を制作することになったのですか?

小村:当初は、現地にて子どもたちとの双方向の交流を想定していましたが、新型コロナウイルスの影響で、私たちDEAR MEの現地での活動が困難になりました。

川端:「子どもたちのために」という観点で、コロナ渦だからこそできる活動は何があるか?と両者で対話を重ねました。最初は教育動画を作ってYoutubeにアップロードし学んでもらうという意見も出ましたが、貧困地区の子どもたちの居住地域はインターネット環境が乏しいし・・・。
色々考えている中で、そういえば、絵を書くのが上手な従業員が居てる!とひらめき、絵本を制作して渡すのはどうかと提案したのがきかっけでした。絵本の絵を書く従業員は多忙なスケジュールの中、私たちに協力してくれました。
デンソーテンフィリピンの従業員は社会貢献活動に対する理解があり、今回も、たくさんの従業員が参画してくれましたね。


デンソーテンフィリピンの従業員が塗り絵デザインを描く

小村:絵本の内容に関しては、両者で何度もブレーンストーミングを行い、10個以上のアイデアをまとめました。ただ絵本を届け読んでもらうだけでなく、出来るだけ自分事化して欲しいという想いから、主人公を子どもたちにしたり、体験型アクティビティにしようと、塗り絵絵本にして繰り返し読んでもらえるようにしました。
今回はフィリピンの環境問題である深刻な海洋汚染とゴミ処理問題などをストーリーに組み込み、最高のストーリーブックが完成しました。本当にたくさんの方が、裏方で動いてくださって、感謝しています。

今回の「Story Book プロジェクト」特に印象に残った出来事は何ですか?

小村:子どもたちが実際に絵本を読み、感じ、行動しようと思ってくれたことです。絵本配布後のインタビューでは、「環境問題を学び、実際にリサイクルをしたり、環境のために行動してくれている人の応援をしたい。」と語ってくれました。

川端:「環境を守ることは私たち(=家族)にとって大切。なぜなら、私たち(=家族)が住むホームだから」「私は環境を守ることで家族も守りたい」と力強くメッセージをくれた子どもたちもいました。彼らの幸せのバロメータは“家族”であることから、これらの言葉は本当に自然に素直に出てきたのだと思います。
だから、このような境遇でありながらも子どもたちの声を、社会全体に知ってもらいたいのです。

小村:この絵本が、子どもたちにとってこのような想いのきっかけになったのはとても嬉しいですし、同時に未来世代のために美しい地球を守る責任を改めて、感じさせられました。

社会全体に伝えたいことは?

小村:ここ数年「サステナブル」や「SDGs」という風潮がますます強くなり、取り組む企業や団体も増えてきています。私はサステナブルの一つの軸として、未来世代に「美しい地球や誰もが自分らしく生きられる世界」を引き継ぐことだと思っています。その点において、未来を生きる子どもたちの声を聞き、子どもたちと共に創り上げていくことが大切になってくるのではないかと考えます。 子どもたちの純粋な声や想いに大人が学ばされることはたくさんあります。私もこのプロジェクトを通して、子どもたちがこれから生きる世界のために声をあげ、行動したいという想いが強くなりました。
子どもたちの未来を大切にし、真意にサステナブルと向き合う企業や団体が増えていけばいいなと思っています。

フィリピンの子どもたちからメッセージが届きました

  



今後の活動について

川端:当プロジェクトでゴールとしている「フィリピンで平等な教育機会を提供し、持続可能な世界を実現する次世代教育を行う」は、一朝一夕で実現できるものではなく、継続的な活動が必要です。そのため、今後の企画においてもそれぞれの企画を繋げ、継続的に実施していきます。例えば、今回の「Story Bookプロジェクト」で子どもたちが実際にやりたいと語ってくれたアクションを、次の「Dream Artプロジェクト」や「Dream Plantingプロジェクト」の教育要素に反映し、オンラインでの教育素材を作成する予定です。

小村:今後のプロジェクトでは、子どもたちとアートを作ったり、植林体験をするなど体験型アクティビティを行い、子どもたちに環境問題を教えるだけでなく、子どもたちの創造力やイノベーション精神を育んでいきたいと思っています。

川端:サステナブルな社会は1団体や1企業だけでは実現が難しいものです。デンソーテンとDEAR MEは事業フィールドは違いますが、同じビジョンに向かってお互いの得意分野を生かしながら協業することで、サステナブルな社会実現に向けて一歩一歩着実に歩んでいきたいです。