DENSO TEN Technical Review

デンソーテンテクニカルレビュー

車載マルチメディア製品における熱流体解析の精度向上

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はじめに

昨今の電子機器は高性能になり、発熱量も増加しています。これにより、機器が過熱して故障する、部品が劣化するなどの熱問題が発生しています。当社が取り扱う車載マルチメディア製品も搭載スペースの制約や軽量化の要求により、製品が小型化しつつも高性能を求められており、この問題も例外ではありません。このような熱問題を防ぐために、当社では製品開発の初期工程の熱設計において、熱流体解析などのCAE(Computer Aided Engineering)を活用しています。今回は、CAEにおける温度予測精度向上についての事例を紹介します。

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CAE活用の課題

熱問題の発生を防ぐため、当社では製品実機を用いた耐熱温度試験を実施し、合否判定をしています。合否判定前の設計初期段階でCAEを活用した温度予測による熱設計を行うことで、早期に問題を発見して熱対策設計を行うことができ、設計品質の向上、設計・評価の工数削減、製品コストの削減が期待されます。しかし現状ではCAEで精度の高い温度予測ができておらず、期待した効果が十分に得られていません。原因として、熱源から外気までの放熱経路を正確に模擬できていないことが考えられるため、今回は周囲環境となる製品筐体から外気への放熱に着目し、温度予測精度向上に取り組みました。

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温度予測精度向上への取組

車載マルチメディア製品の耐熱温度試験時は、車載環境を想定し、65 ℃環境の恒温槽で行われます。実測評価では恒温槽内の熱風により、製品周辺で対流が発生している環境下であるのに対し、CAEは無風環境下で解析していました。これらの違いにより、CAE温度結果は実測温度結果と60 %の乖離があることがわかりました。乖離を最小限にするためには、実測環境を精細にモデル化することが求められますが、恒温槽の熱風の制御仕様を正確に再現することができず、CAE温度結果に補正を加えて実測温度結果を予測する方法を考えました。限られた条件において収集した実測・CAEデータをもとに熱の基礎理論式を用いて補正値を算出し、CAE温度結果に補正値を適用することで、CAE温度結果は実測温度結果との乖離が18 %まで低減し、温度予測精度を向上することができました。

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まとめ

今回の取組により、限られた条件での検証結果にはなるが、実測とCAEの乖離傾向を把握することができました。また、CAE温度結果に補正を加えることで、CAEにおける温度予測精度を向上させることができました。今後は、当社の製品仕様および評価環境においてどの条件が補正値に最も影響を与えるかを検証します。そして、”補正”を用いた温度予測手法の汎用性を向上させ、車載マルチメディア製品やECU(Electronic Control Unit)製品の設計検証に役立てます。また、製品開発の初期工程での熱設計を推進し、設計品質の向上、設計・評価の工数削減、製品コストの削減に寄与していきます。

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