DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
車載ワイヤーハーネスレスに向けたUWB通信干渉抑止の研究
- 分野
- 車載無線技術
- 関連製品
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はじめに
近年、自動車の高機能化に伴い、電子機器同士をつなぎ合わせるワイヤーハーネスが増加しています。ワイヤーハーネスの増加は、環境への影響(重量増による燃費の悪化、廃棄物の増加など)、配線スペースの増加による車両スペースの圧迫、コストへの影響(組付け、品番管理、在庫管理の工数の増加など)の問題を引き起こします。
そこで、私たちはUWB通信を用いた車載ワイヤーハーネスレス化の検討を行いました。

UWB通信の課題
UWB通信は、ほかの通信から受ける影響を最小限に抑えることができるため、Wi-Fiなどと比べて自動車用途に適した無線通信です。しかし、UWBデバイス間の電波干渉(複数の電波が相互に影響を与え合うこと)は大きく、そのままでは使用できません。例えば、同じシステムを持つ車両が隣に並んだ場合、隣の車両からの電波に妨害され、通信ができなくなることがあります。

開発技術
私たちは、UWBデバイス間の干渉影響を大幅に低減できる新しい干渉抑制調停制御(ISAC)を発明しました。
ISACはUWBの特性を利用した2段階の干渉制御方法になります。
第一段階:受信モードの最適化
第二段階:プリアンブルコードの優劣特性の利用
ISACの効果を確認するために、周囲に同じシステムを持つ車両が最大5台近接している状態を模擬した実機評価を行いました。その結果、ISACを用いることで、5台の車両が近接している状態でも10-5以下(1/100,000回以下)の失敗率と、高い通信の信頼性が得られました。


まとめ
今回、当社は車載UWBネットワーク用のISACを発明しました。この方式により、UWB通信の大きな課題であるUWBデバイス間の干渉を大幅に軽減できることを確認しました。これにより自動車のワイヤーハーネス削減に期待できます。今後は、実用化に向けて更に技術の完成度向上に取り組んでいきます。