DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
コネクティッドサービス向けクラウドプラットフォームの開発
- 分野
- クラウドシステム
- 関連製品
- ドライブレコーダー
はじめに
近年、市場では通信型ドライブレコーダーが普及しており、商用車向けでは安全運転管理・運行管理サービス、自動車保険向けでは事故時のサポートなどのサービスが提供されています。
当社は 商用車向けおよび自動車保険向けのドライブレコーダー(以下、端末という)連携型クラウドシステムを開発・運用し、テレマティクスサービスの実現に取り組んでいます。しかし、業態や顧客ごとにシステムを個別開発しているためシステムごとに仕様が異なり、開発効率を改善しづらいことが課題でした。
そこで、業態や顧客ごとにカスタマイズ可能で、開発・運用の効率化を実現するコネクティッドサービス向けクラウドプラットフォーム(以下、コネサビPFという)を開発しました。

コネサビPFに求められる要件
要件①:各種業態・顧客への迅速な機能提供
当社は様々な業態・顧客に対してシステムを提供しており、各業態や顧客のニーズは多様で変化が早く、迅速な機能提供が求められます。
要件②:システムの柔軟性・拡張性
日々変化する顧客のニーズに迅速に対応するためのシステムの柔軟性と、サービスの普及に伴う大量データ処理に対応するためのシステムの拡張性が求められます。
要件③:セキュリティ確保・プライバシー保護
安全に使っていただくためにセキュリティ確保やプライバシー保護の対策が求められます。
要件④:障害影響の局所化
本システムは事故時の緊急通報機能等を有しており、一部の障害がシステム全体に波及してしまうと原因特定や修正に時間がかかり、顧客が大きな損失を被ってしまいます。そのため、システム障害の影響を局所化することが求められます。


実現方策
前述の要件に対する実現方策は以下のとおりです。
要件①への対応:サービス共通のアーキテクチャ
当社の現行システムの共通機能をコア部と定義し、各機能のインターフェースやデータフォーマットを決定しました。業態・顧客特有の機能をカスタム部と定義し、業態・顧客ごとにデータ構造が異なるため、コア部のデータ構造に変換する機能を配置しました。
また、WebAPI(Web Application Programming Interface)を公開し、顧客やSIer(System Integrator)が独自のUIを開発できる環境を整えました。
要件②への対応:マイクロサービスアーキテクチャの採用
マイクロサービスアーキテクチャを採用することで、システムの柔軟性を向上させました。またイベント駆動アーキテクチャとすることで、システム全体の反応性・拡張性を向上させました。
要件③への対応:開発プロセス標準に従った開発
株式会社デンソーの標準をもとに制定されたITサービスのサイバーセキュリティ確保やプライバシー保護の開発プロセス標準・規定に従って開発し、実行体制を確立しました。
要件④への対応:アカウント分離・インフラリソースのコード化
多業種への展開を見据えてクラウド環境をアカウント分離することで、障害等の影響範囲の低減、課金やガバナンスの管理が行えるようにしました。そのためにインフラリソースをテンプレート化・コード化して管理することで、容易に展開できることを目指しました。
上記を踏まえ、コネサビPFのアーキテクチャを決定し、本アーキテクチャに基づき、システムの開発を行いました。

まとめ・今後の展開
今回、業態や顧客ごとにカスタマイズ可能で、開発・運用の効率化を実現するコネサビPFの開発を行いました。その結果、本サービスの機能の7割程度がコア機能になり、業態や顧客ごとのシステムの開発工数を大幅に削減することで、開発効率を改善できました。
本技術を活用し、通信型ドライブレコーダーOffseg®のサービスを開始しました。また、顧客やSIerにWebAPIを公開することで、それぞれのニーズに合わせたカスタマイズが可能になり、サービス提供範囲を広げることができました。
今後は交通・社会システムの変化に合わせてプラットフォームを拡張しながら、新しい移動の価値を創造・提供を行うモビリティソリューションパートナーを目指していきます。
