DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
熱設計への取組(ブロアファンの解析モデル構築)
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- 熱流体シミュレーション
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はじめに
昨今の電子機器において、高機能化・高性能化・高集積化が進んでいくことで製品の発熱量が増加しており、多くの熱問題を発生させます。当社としても熱設計の取組を実施しており、製品開発の上流設計で熱流体シミュレーション(以下、熱SIM)によって温度予測を実施し、熱対策を製品に盛り込んでいます。そのため、熱SIMで精度の高い温度予測をできるようにすることは重要です。今回、その取組の一つを紹介します。

取組背景
熱対策の一つにファンの追加がありますが、ファンから噴出する風の流れを正確に再現することが難しいため、精度の高い温度予測を行うことは困難です。当社製品で使用するファンには軸流ファンとブロアファン(以下、ブロア)があり、ブロアは噴出する風によって発熱部品を直接冷却する使い方をするため、ファンから噴出する風の流れの再現がより重要になります。現行のブロアを用いた熱SIMでは一定の風が噴出するファンの解析モデル(以下、現行解析モデル)を利用しており、風速や風向を考慮できてませんでした。そこでファンから噴出する風の流れを正確に再現したブロアの解析モデル(以下、新解析モデル)の構築を行いました。

ブロアの解析モデルの構築
ブロアから噴出する風の流れの把握を行うために、ブロアの複数ポイントでの風速を実測しました。風の流れを再現する為には、解析条件としてブロアの噴出口を分割し、その分割した面それぞれに任意の風速・風向を設定することが必要になります。しかし、利用している熱SIMソフトウェアのデフォルト機能では噴出口全体に対して1つの風速・風向しか入力しかできませんでした。そこで簡易プログラムを作成し、熱SIMソフトウェアと連携させることにより、解析条件として『ブロアの噴出口の各位置から異なる風速・風向の設定』ができるようになりました。これによりブロアから噴出する風の流れを再現することができました。
新解析モデルの部品温度への効果を確認するために、実機測定結果と解析結果の温度比較を実施しました。現行解析モデルに比べ新解析モデルの解析精度は、平均で6%程度の改善を図ることができました。またブロアから噴出する風の影響が特に高いと考える箇所では平均値よりも精度が改善(最大+9%)していました。


まとめ
ブロアの風の流れを再現した熱SIMの解析モデルの構築を行うという、デジタルツインでの考えを取り入れた取組を実施しました。その結果、熱SIMで精度の高い温度予測ができるようになり、一定の成果を得たと考えます。
今後は熱だけではなく、他の解析(強度解析やEMC解析等)に対しても、現実/仮想を連携させたアプローチをし、精度を向上させる取組を行っていきます。