DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
車載用ディスプレイスピーカーの開発
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- 22用品 後席ディスプレイ
はじめに
自動車向け後席ディスプレイは搭載位置が車両の天井であり、スピーカーは足元にあるため、家庭での視聴環境とは異なり、スピーカーと映像表示場所が離れています。そのため、後席の人が映像の音声を聞き取りにくいという問題点がありました。そこで、当社の強みである音技術と、有機EL(以下、OLED)ディスプレイを組み合わせ、映像と音を一体化する“車載用ディスプレイスピーカー” を開発しました。


当社の開発技術1 目標音圧の確保
ディスプレイスピーカーはアクチュエータの振動で画面を振動させ、音を前面に出力する構造としました。しかしパネル背面に直接ピエゾを貼り付けた構造では目標音圧に対し出力不足になるという問題が発生したため、薄型で振幅を稼げるバイモルフ構造のアクチュエータを開発しました。バイモルフ構造はピエゾを基材となる振動板の表裏に貼り付け、逆相駆動=伸縮させることで振動させるものであり、アクチュエータ中央部をパネルに固定し、パネルを面直方向に直接振動させました。これにより音圧は大幅にアップし目標音圧を確保することができました。


当社の開発技術2 前席への 音漏れ対策
後席ディスプレイは車両天井の前席(運転席、助手席)近くに搭載しているため、後席ディスプレイからの音漏れで前席の人がナビ音声や音楽が聞き取りにくいという問題点がありました。音漏れは、製品筐体内でアクチュエータの振動音が空気を伝搬する “空気伝搬”と、アクチュエータの振動が構成部品を伝搬する “振動伝搬”が主要因です。
そこで、解決策として、
①OLEDホルダ(板金)の開口部(穴)を縮小しアクチュエータからの音を軽減
②吸音材の追加により背面への音を吸収
③背面パネルの剛性アップにより背面パネルの振動抑制
の対策を実施しました。
これらにより前席への音漏れを低減できました。


まとめ
今回、車載用ディスプレイスピーカーを開発したことにより、後席の人が映像の音声が聞き取りにくいという問題を解決できました。また、ディスプレイスピーカーで映像と音を一体化することにより後席での臨場感ある映像視聴体験を提供し、クルマの移動を快適で楽しい空間に変えることができました。
今後は開発したディスプレイスピーカー技術を進化させ、車室内にある他のディスプレイ(センターディスプレイ、メータディスプレイ等)や操作パネル部への転用を検討していきます。