DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
組み込み機器向け軽量・高性能エッジAI技術の開発
- 分野
- イノベーション
はじめに
コネクティッドカーの普及に伴い、今後、クルマが収集するデータの活用の多様化・高度化が進み、データ需要が増大すると考えられます。そこで私たちは、必要なデータだけをクラウドセンターからクルマへ要求する、具体的には車載器上でAIを用いてデータを解析して必要なデータかどうかを判別するためのタグを付与することで、データ収集コストを削減する「効率的なデータ収集方式」に取り組んできました。今回、この方式の中で車載カメラに映っている物体の位置・種類を車載のエッジ端末上で認識する、軽量・高性能なエッジAI技術を開発しました。

エッジAIの課題
画像認識のAI技術はディープラーニング(深層学習)が主流で、従来の認識技術よりも高精度に認識できます。製品の開発者がディープラーニングの画像認識ソフトウェア(以下、AIモデル)を車載端末上で動かすためには、次の課題があります。
課題(1) 車載端末で処理できる演算量への削減と共存可能な省メモリ化
課題(2) 大量の教師データの準備と、AIモデルの学習を短時間でおわらせること
課題(3) 原理的に精度100%を担保できないAIの動作を保証するAI品質保証

当社の開発技術
上記課題(1)~(3)に対し、次の取組みを行いました
(1) 演算量削減と省メモリ化を実現するエッジAI超軽量化技術
内部の処理の一部を演算量の少ないものに置き換え、演算ビット幅の削減や、認識結果への影響が小さい演算を除去することで、取組前と比較して、演算量1/60以下、メモリ量1/32以下で同等の認識性能を実現しました。
(2) 教師データの準備とモデル学習を短時間でおわらせるモデル生成効率化技術
AIを学習させるための教師データの作成を部分的に自動化することで、作成時間を20%削減し、モデル学習用のパラメータ調整を自動で最適化することで学習回数を削減しました。
(3) AI品質を保証する開発プロセスの構築
AIモデルのリスク(誤検知、未検知など)に対して事前にできる限りの手を打つ、当社独自のAI品質基準の策定とその品質を保証できるプロセスを構築しました。

まとめ
今回開発したAI技術の用途として、収集画像の個人情報保護、車両や歩行者の通行量の把握、防犯カメラでの侵入検知、店舗内カメラによるお客様の移動軌跡の検出などへの使用が考えられます。