DENSO TEN Technical Review
デンソーテンテクニカルレビュー
スポーツイベントにおける混雑緩和のための人流制御技術開発
- 分野
- MaaS、混雑緩和
はじめに
当社では、「クルマの価値向上」と「生活の価値向上」に向けて、新たな移動の価値を提供するサービスの実現に取り組んでいます。その一つとして大規模スポーツイベント終了後に発生するスタジアムから最寄りの交通機関までの混雑に着目し、その混雑問題を解消するための人流制御技術に取り組みました。解決手段として、専用スマートフォンアプリ「困ってMaaS®」を開発するとともに、混雑緩和をより効果的に実現する、組合せオークションを用いたクーポン配布システムの開発にも取り組みました。有効性を確認するための実証実験を、地元神戸のサッカーJリーグチーム「ヴィッセル神戸」のホームスタジアム「ノエビアスタジアム神戸」で行いました


取組紹介:困ってMaaS®
「困ってMaaS®」では、スポーツイベント終了後にスタジアム内に滞在していた時間に応じたポイントを付与し、周辺店舗で利用できるクーポンと交換できる仕組みを提供します。この仕組みにより、「待ったらいいことがあるな」、「せっかくポイントを貰ったからクーポンを使いにいこう」といったユーザの心理面に訴えかけることで行動を促し、帰宅時の来場者が集中する「時間」と「場所」の双方における人流分散を実現します。更に、帰宅する人に対して周辺店舗への寄り道を促すことで、スタジアム周辺の経済活性化にも貢献することができます。アプリの有無によるスタジアムの試合後の滞在時間を検証する実証実験では、「困ってMaaS®」を導入することにより、スタジアムに30分程度長く滞在されていることを確認でき、混雑緩和に有効であることが確認できました。


取組紹介:組合せオークションを用いたクーポン配布システム
クーポン提供によって帰宅予定の来場者を周辺店舗へ誘導する施策は、混雑緩和と経済活性化に貢献できますが、大人数が同じクーポンを使った場合、誘導先店舗が逆に混雑してしまう問題があります。
そこで、組合せオークションを適用したクーポン配布システムを開発しました。組合せオークションでは、一つのクーポンへの集中利用を抑えながら混雑緩和を実現するようにクーポン配布を最適化します。クーポン配布の最適化を行うことで、クーポン利用による過度な店舗の混雑を抑えることができます。


まとめ
「困ってMaaS®」では、スタジアム内に滞在していた時間に応じたポイントを付与し、周辺店舗で利用できるクーポンを提供することでユーザの心理面に訴えかけ、行動を促しました。また、誘引店舗先の混雑を抑えるために組合せオークションを用いたクーポン配布システムを構築しました。実証実験では、スタジアムから最寄りの交通機関までとその周辺店舗の混雑緩和に有効であることを確認しました。今後は、混雑緩和だけでなく街の回遊性向上を実現する人流制御技術に向けて取り組んでいきます。
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