1台のハイブリッド車には実に多くのECUが搭載されています。中でもそのクルマを最もハイブリッド車たらしめるのが「ハイブリッド制御ECU」です。つまりエンジンとモーターというハイブリッド車が搭載する2つの動力源について、いかに交通整理を適切に行って高効率な運転を実現するか――まさにハイブリッドシステムの要になる司令塔役を高い処理性能で実現するECUなのです。
エンジンの効率の悪い発進時や低速域では、モーターのみで走行する。急加速の際にはエンジンとモーター双方の駆動力を合わせて大きな加速力を得る…といった具合に、アクセルの踏み込み量やその時点での車速に応じて、最適な制御を行います。(各シーンの動きの詳細は下図を参照)
基本的には、エンジンにもモーターにも、それぞれ単体として高効率な稼働を実現するために、「エンジン制御ECU」や「モーター制御ECU」が別途搭載されています。ハイブリッド制御ECUは、シーンに応じて、2つの動力の役割分担を決めたり協力させたり、車輪の回転による運動エネルギーをバッテリー充電に割いたりと、ハイブリッドシステムの頭脳としての役割を果たします。
オーケストラが素晴らしい音楽を奏でるには何が必要でしょうか。まずは十分な技量を備えた一人ひとりの演奏者。これが必要条件といえるでしょう。ハイブリッド車になぞらえるなら、熱効率の高いエンジンやエネルギーロスの少ないモーターがそれに当たります。では十分条件は何か……優れた指揮者の存在です。楽譜・楽曲を正しく解釈し、個々人の演奏力を最大限に引き出しながら、トータルとして聴衆に感銘・感動を与える演奏会に仕立てます。ハイブリッド制御ECUはパワートレインにおける指揮者といえるでしょう。アクセルを通してドライバーの意図を理解した上で、全体最適の観点からエンジンとバッテリーの役割分担や協力・調和を演出し、必要十分な動力・環境性能を発揮させる役割を担います。
発進時
通常走行時1
通常走行時2
全開加速時
減速・制動時
停車時