ハイブリッド制御ECUとは

1台のハイブリッド車には実に多くのECUが搭載されています。中でもそのクルマを最もハイブリッド車たらしめるのが「ハイブリッド制御ECU」です。つまりエンジンとモーターというハイブリッド車が搭載する2つの動力源について、いかに交通整理を適切に行って高効率な運転を実現するか――まさにハイブリッドシステムの要になる司令塔役を高い処理性能で実現するECUなのです。
エンジンの効率の悪い発進時や低速域では、モーターのみで走行する。急加速の際にはエンジンとモーター双方の駆動力を合わせて大きな加速力を得る…といった具合に、アクセルの踏み込み量やその時点での車速に応じて、最適な制御を行います。(各シーンの動きの詳細は下図を参照)

基本的には、エンジンにもモーターにも、それぞれ単体として高効率な稼働を実現するために、「エンジン制御ECU」や「モーター制御ECU」が別途搭載されています。ハイブリッド制御ECUは、シーンに応じて、2つの動力の役割分担を決めたり協力させたり、車輪の回転による運動エネルギーをバッテリー充電に割いたりと、ハイブリッドシステムの頭脳としての役割を果たします。

ハイブリッド制御ECUを例えるならば、
オーケストラの指揮者

オーケストラが素晴らしい音楽を奏でるには何が必要でしょうか。まずは十分な技量を備えた一人ひとりの演奏者。これが必要条件といえるでしょう。ハイブリッド車になぞらえるなら、熱効率の高いエンジンやエネルギーロスの少ないモーターがそれに当たります。では十分条件は何か……優れた指揮者の存在です。楽譜・楽曲を正しく解釈し、個々人の演奏力を最大限に引き出しながら、トータルとして聴衆に感銘・感動を与える演奏会に仕立てます。ハイブリッド制御ECUはパワートレインにおける指揮者といえるでしょう。アクセルを通してドライバーの意図を理解した上で、全体最適の観点からエンジンとバッテリーの役割分担や協力・調和を演出し、必要十分な動力・環境性能を発揮させる役割を担います。

ハイブリッド制御ECUの役割

  1. 発進時

  2. 通常走行時1

  3. 通常走行時2

  4. 全開加速時

  5. 減速・制動時

  6. 停車時

  • 発進時(モーター走行時)

    発進前に電池の充電状態を確認。発進時および低速走行時など、エンジン効率の悪い領域ではエンジンを停止し、低速トルクやエネルギー効率に優れたモーターのみを利用して駆動力を得ます。(電池残量が少ない場合にはエンジンを併用)

  • 通常走行時1(エンジンが主動力 低燃費走行)

    エンジンの動力により車輪を直接駆動する一方、動力の一部を発電機に回してその電力でモーターを動かし、効率を最大化すべくこれらの割合を制御します。

  • 通常走行時2(エンジンが主動力 低燃費走行)

    発電機で余った電力は電池への充電にも充てられます。

  • 全開加速時(2つのパワーで効率のよい加速)

    全開加速時は電池からも電力を供給します。エンジンとモーター、両者のパワーを合わせ、レスポンスのよい滑らかな動力を得て力強い加速力を発揮します。

  • 減速・制動時(減速エネルギーを電池に充電)

    減速時や制動時には車輪がモーターを駆動します。モーターを発電機として作動させ、通常ブレーキでの熱損失として失われるエネルギーを電力に変換するとともに、制動力を与えます(回生ブレーキ)。これにより、回収した電力を電池に充電します。

  • 停車時(動力系すべてを停止)

    停車時はエンジンを自動的に停止。ただし、電池は一定の充電状態を維持するように制御されているため、充電量が少なくなるとエンジン始動により発電機を駆動させ充電を開始します。

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