2015年1月13日
富士通テン株式会社
開発した軽量スピーカー(左:ネオジム磁石使用 右:フェライト磁石使用)
富士通テン(株)(本社:兵庫県神戸市 代表取締役社長:山中 明)は、音質を維持しながら質量を従来比約30%削減した、業界トップクラス(*)の車載用軽量スピーカーを開発しました。今回開発したスピーカーは車両の多くに標準的に装着される口径16cmサイズのもので、ネオジム磁石を使用したタイプ(135g:当社従来品比約30%軽量化)と、フェライト磁石を使用したタイプ(190g:当社従来品比約35%軽量化)の2種類を開発しました。既に国内の自動車メーカーに採用いただき順次納入を開始しています。現時点で納入が確定しているスピーカー数量を従来仕様で準備した場合と比較すると、約430トン/年の質量が削減可能です。
当社では今回開発した技術を16cm以外のサイズのスピーカーにも応用して国内外自動車メーカーへの提案活動を強化し、より多くの車両に搭載していただくことで、車両の軽量化、地球環境保全に貢献していきたい考えです。
タイプ | 質量 | 当社従来品比(※) |
---|---|---|
口径16cm車載用スピーカー(ネオジム磁石使用) | 135g/個 | ▲約30% |
口径16cm車載用スピーカー(フェライト磁石使用) | 190g/個 | ▲約35% |
自動車が世界的に普及する一方で、地球温暖化や排ガスによる大気汚染が深刻な問題となっています。自動車業界ではハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車の開発をはじめ、少ない燃料で長距離を走れる車の開発が急ピッチで進められており、燃費向上のために車両の軽量化にも取り組んでいます。車体やあらゆる部品において軽量化が検討されており、当社が開発する車載用スピーカーもそのひとつです。
1995年頃に高い磁力を持つネオジム磁石を磁気回路に使用したスピーカーが自動車メーカーに採用され始め、それまで600g程度であった質量は200g程度にまで軽量化されましたが、音質を維持しながらそれ以上の軽量化は難しく停滞していました。また、ネオジム磁石は希少な資源で構成されており、コストが高価でさらに高騰するリスクを抱えていました。
一方、従来から使用されていたフェライト磁石では、ネオジムに比べて磁力が弱いため、音質を維持したまま軽量化を図ることが困難とされていました。
スピーカーの質量のうち約80%を占める、フレームと磁気回路を見直しました。
<課題> 単純にフレームを薄肉軽量化すると強度が低下し、不要な共振が発生して音質が劣化。
<主な方策> 強度解析シミュレーション技術を用いたフレーム形状の最適化により、薄肉化を図りながら振動を分散させる「振動分散型フレーム」を開発。
① 強度確保、音質向上:フレーム脚部を2本上下に配置するとともに、断面形状を変更
② 軽量化:フレームの平均肉厚を極限(1.0mm)まで薄肉化
(注)この図は、ネオジム磁石を使用したタイプのイメージです。フェライト磁石を使用したタイプも構造や方策は同様です。
<課題> マグネットの磁気を伝える役割をもつヨークを薄肉化すると、振動板を駆動するための磁束密度が低下し、これに伴い音圧が低下、音質も劣化。
<主な方策> 磁気回路シミュレーション技術を用いて磁気回路形状の最適化を図り、磁束密度を確保しながら体積を最小化できる形状を見出すことによりヨークの薄肉化を実現。これにより貫通穴を大型化することで、空気の流れを動きやすくして振動系の動きを良くする改善を図り低音域のレスポンスを向上。
① 軽量化:プレート、ヨークの薄肉化/形状最適化
② 軽量化、音質(低音域レスポンス)向上:ヨークの貫通穴大型化
(注)この図は、ネオジム磁石を使用したタイプのイメージです。フェライト磁石を使用したタイプも構造や方策は同様です。
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