【NEWS RELEASE】
2005(平成17)年5月19日
本技術は、車載レーダーの普及を促進させ、より安全な社会の実現に貢献するものです。 今回開発した技術は、車載レーダーへの応用のほか、ミリ波超高速データ通信等の機器の低コスト化にも適用可能です。 【開発の背景】 自動車の安全性をより高めるために、ミリ波回路を用いた車載レーダーの実用化が進みつつあります。車載レーダーのミリ波回路では、周辺の障害物や相対速度の情報を得るために、77ギガヘルツ付近の非常に高い周波数の電波を用いています。すでにユーディナデバイス株式会社では、セラミックパッケージにミリ波集積回路をフリップチップ実装(注4)した車載レーダー用ミリ波高周波モジュールを製品化していますが、車載レーダーの普及には、このミリ波回路モジュールのさらなる低コスト化が不可欠となります。 【課題】 車載レーダーのミリ波回路では、非常に高い周波数での動作に対応するためにP-HEMT(注5)などのガリウム砒素系の化合物半導体を用いていますが、耐湿性の確保のために、これをセラミックパッケージに気密封止する必要がありました。しかも、高い周波数での特性を確保するためには、0.2ミリ程度の非常に薄いセラミックが必要です。このことが、ミリ波回路モジュールを低コスト化する上で妨げとなっていました。 【開発した技術】 今回開発したのはミリ波回路モジュールを低コスト化する技術です。化合物半導体を用いたミリ波集積回路の配線部分を、ポリイミド・窒化膜・配線金属を用いた多層配線とすることで、チップ面積を縮小すると同時に集積回路自体の耐湿性を向上させ、世界で初めて、樹脂パッケージへ実装することを可能としました。 また、配線最上層を接地金属とする逆マイクロストリップ線路(注6)構造にし、これをフリップチップ実装することで、集積回路のチップサイズがミリ波の2分の1波長以上となると発生する共振を抑えることにも成功しました。 【効果】 今回開発した技術により、樹脂パッケージでも十分な信頼性と高周波特性を持ったミリ波回路モジュールを構成できるようになりました。樹脂パッケージのコストは従来のセラミックパッケージに比べると10分の1以下です。また、配線の多層化により、ミリ波集積回路のチップ面積は現行の3分の1以下となりました。 さらに、樹脂パッケージはセラミックパッケージに比べて割れにくいため、樹脂パッケージ部にアンテナを接続するための導波管(注7)インターフェイスを持たせることが可能となりました。 【今後】 今後、量産化技術を確立し、2007年頃のミリ波回路モジュールとしての製品化を目指します。 以 上 ![]() 図1 多層配線集積回路と樹脂基板へのフリップチップ実装 (注1) 株式会社富士通研究所:社長 村野和雄、本社 川崎市中原区。 (注2) ユーディナデバイス株式会社:社長 志賀信夫、本社 横浜市栄区。 (注3) 富士通テン株式会社:社長 槌本隆光、本社 神戸市兵庫区。 (注4) フリップチップ実装:チップの回路面にバンプ(接続用金属)を多数並べ、回路面を下に向けて基板に押し付ける形態で電気的に 接続する実装のこと。 (注5) P-HEMT:HEMT(High Electron Mobility Transistor、高電子移動度トランジスタ)とは、バンドギャップの異なる半導体材料(例え ば、GaAsとAlGaAs)の境界で電子が高速に移動することを利用した電界効果型トランジスタ。P-HEMT(pseudomorphic-HEMT、 擬似格子整合HEMT)は、異なる種類の半導体同士を疑似格子整合とすることで、より高い性能を得ることが出来るようにしたもの。 (注6) 逆マイクロストリップ線路:接地金属、誘電体基板、金属配線、空気の順で伝送線路を構成しているマイクロストリップ線路に 対し、接地金属、空気、金属配線、誘電体基板の順で構成される伝送線路。本技術では空気のかわりにポリイミド樹脂を用いて いる。 (注7) 導波管:中空の導体の管の中に電磁波を伝搬させる伝送線路。 【技術に関する問い合わせ先】 株式会社富士通研究所 ワイヤレスシステム研究所 RFソリューション研究部 電話:044-754-2647(直通) e-mail:mm-wave@ml.labs.fujitsu.com |
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